満足度★★★
癖になる肩透かし感
6階建ての雑居ビルの5階に出入りする男性14人の様子が奇妙なテイストで描かれ、ほとんどストーリー性もなく判然としない箇所がたくさんありながらも不思議な魅力のある作品でした。
暗転して明るくなる時に客席まで明るくなる冒頭から妙な引っ掛かりを感じさせ、素人っぽくも見える少々投げやり感のある台詞回しで淡々と会話が連なり、後の展開を予感させる様々なエピソードがそのまま放置されたりしながら、登場人物達の特に強い意志があるわけでもない心情がシュールに描かれていました。
深読みすればメッセージがありそうだと思わせつつ、実はただのナンセンスとも感じさせる雰囲気が独特でした。
ドアの付いた小さな壁が両袖に立ち、下手側にエレベーター、上手側にはガラクタの山があるのみで、舞台の裏側がそのまま見えているという、作り込んだセットを用いる公演が多い本多劇場らしからぬ質素な設らえや、舞台上で素で吹き出してしまう役者等、舞台上を自立した虚構の世界として完結させない要素が絶妙なバランスで存在しているのが興味深かったです。
作品の内容に対して舞台、客席とも大き過ぎて求心力が弱まって感じられたのが残念でした。