幸せはいつも小さくて東京はそれよりも大きい 公演情報 アマヤドリ「幸せはいつも小さくて東京はそれよりも大きい」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    窓ガラス1枚、犬の腹の皮1枚向こう側の「社会」
    STスポットという小さなスペースで、まるで若くて新しい劇団のような姿勢。
    (受付とか客入れに出演者が対応したりして)
    どことなく、フレッシュさを感じた。
    そして、とにかく面白い。

    けど言いたいこともある。

    ネタバレBOX

    2009年にシアタートラムで上演された『モンキー・チョップ・ブルックナー!!』を大幅に改訂した作品。

    そのときの私の感想は、「私の中では、間違いなく今年度ベストワン!!」というものだった。

    http://stage.corich.jp/watch_done_detail.php?watch_id=55152#divulge

    なので、それの改訂作品ということで、さらにハードルが上がったと思う。


    『モンキー・チョップ・ブルックナー!!』のときのPOPさは気配を消し、個人的に勝手に「ひょっとこフォーメーション」と呼んでいる群舞もかなり控え目、それによって、「ドラマ」と「テーマ」が、まるで鋭いキリで突き刺すようにピンポイントで攻めてきた。

    基本となるストーリーは、前作と同じながら、前作では、監禁女性・三谷を数人の女優が演じていたのだが、今回は、1人、笠井里美さんだけが演じる。
    その姿は、前回のときには、強い、いわば「押し」の守って欲しいオーラだったのが、今回は、「引き」の守って欲しいオーラとなっていた。

    つまり、「押しのオーラ」のときには、それに対抗する小田も、強さがないとダメであり、前回の感想で私は小田を演じたチョウソンハさんを「小田の気持ちの動きと、それを表現する台詞と身体の動きの縦横無尽さは、まるで化け物とかモンスターのようだ。それぐらい凄い」評した。例えば、人に対するときの詰め寄り方の変化がもの凄かったのだ。

    今回の「引きのオーラ」が出ている三谷に対抗する小田(松下仁さん)は、まさに「引き」に対応している演技だったのではないだろうか。徐々に変な方向にすべっていく様も、ちょっとだけ軌道が外れてしまいました、という雰囲気で、黒テープのくだりはかなりインパクトが増していた。

    そして、三谷の存在が薄くなることで、小田の意味が鮮明に浮かび上がってくるのだ。
    「監禁」という「束縛」の状況の逆転が前回であったとすれば、今回は、「監禁」というエッセンスは、小田の中にある「観客席に自分はいる」という気づきを与え、それは、「プレイヤーとして社会にかかわっている、ほかの人たちとは自分は違うのだ」ということを意識させた。

    つまり、小田と社会の関係が明らかになってくることで、小田は安心してしまったということなのだ。
    三谷はそのための触媒にしかすぎず、しかし、そばにいないことには、不安になってしまう。

    小田と社会は「窓ガラス一枚」だけ(も)、「犬のお腹の皮一枚」だけ(も)隔たっている。
    それを教えてくれたのが三谷である。
    小田は自分の感じていた(社会との)違和感をこうして「コトバ」にすることで、「わかった」のだ。

    つまり、三谷は小田にとっての「本当」で「唯一」の理解者であり、グル(導師)でもある、という勘違いから、勘違い=恋愛的な感情に結びついているようになるし、周囲からはそうとしか見えない関係になっていく。しかし、これは男女の恋愛ではない、もっと深いところでの結び付きである。
    ただし、それは「小田からの一方通行」の可能性が高い。

    こうした「ドラマ」と「テーマ」を満載しながらも、「笑い」をまぶし、抜群の構成と演出、展開のテンポで2時間近い舞台は息つく暇もなく進むのだ。

    そして、何より役者もいい。

    とても面白かった。
    アマヤドリはこうしてスタートしたのだ。

    ただ、ひとこと言っておきたいことがある。
    前回「大爆破」とまで言っておいての、「アマヤドリ」である。
    大爆破したんだから、「ひょっとこ乱舞」はないもの、として考えていた。
    なのに、ひょっとこの作品の改訂版だったのは少々残念。
    新作で、アマヤドリのスタートを切ってほしかった。

    そういう意味では「アマヤドリ(ひょっとこ乱舞改め)」のカッコの中だって、もういらないんじゃないだろうか。
    何のために劇団名は大爆破したのかはわからないが、「アマヤドリ」だけでやっていけばいいんじゃないのだろうか。
    それともいつまでもいつまでも、大爆破したはずの「(ひょっとこ乱舞)」の古い殻を付けていくつもりなのだろうか。

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    2012/05/27 12:09

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