軍鶏307・改訂版 公演情報 劇団桟敷童子「軍鶏307・改訂版」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    弱者たち
    評判良さそうなので観劇。115分あっという間。面白かった。

    舞台美術と照明の出来が良い。
    接客の体勢が抜群に良い。マンパワー全開って感じ。

    ちなみに、キャストが若手中心に組んだらしく、この点良い方に転んだのだろうと思う。個人的にはね。

    ネタバレBOX

    大戦後の能嶋病院という、性犯罪被害者の堕胎を行い心と体の治療療養をする病院が舞台。満州から引き上げてきた看護婦・桜(椎名りく)が訪れているところ、地元ヤクザの楢崎組のチンピラたちがやってきてメンドリさん(板垣桃子)を出せという。メンドリさんは息子を戦争で失ったショックで精神に異常をきたした女性で、港で米軍将校が婦女暴行を働こうとした際、将校を殴ったため、将校が米軍物資の横流しなどで取引きのある楢崎組にメンドリさんを連れてこいと依頼をしたのだ。メンドリさんを守ろうと、病院や女性らを悪く言うチンピラたちに牙を剥く女性たちは物干し竿を手に闘う…。

    OPのメンドリさんの演技と演出で、いきなり心を掴まれる。息子の遺骨が届いたシーンの静寂とかゾッとするくらい。

    確かに、メンドリさんや桜を中心とした女性の闘いが主軸と思うけど、むしろ、病院院長・図書助(稲葉能敬)にチンピラと罵られたチンピラたちの、どうにもならない弱者の叫びが気に入った。
    組長の異母弟・兵悟(深津紀暁)をはじめ、兄貴分の籔(桑原勝行)、図書助の妹といい感じになる信介(井上昌徳)、飛行機(軍鶏307)の設計をした彦市(橋本克己)の4人は、立場の弱い人間が心を痛めながら、人さらいなんてやりたくないけどやらないといけない、ダメと分かっていてもやらなきゃならない愚かさをちゃんとに体現してたと思う。
    さらに言えば、病院関係者もその患者の女性らもチンピラたちも、皆弱く、戦争に負けた国を体現した存在のようにみえた。(もちろんその中にはポジティブなパワーが詰まっているのだけど)

    メンドリさんを奪い守る姿も、和解して「軍鶏307」を一緒に造り上げる姿も、命をかけたり法を犯したりして他人を思いやる姿も、どれも美しくて不格好で、そんなところが胸を打つ舞台だった。

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    2012/05/22 01:13

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