満足度★★★★
切ない良い芝居、だが前半の「笑い」部分が少々うるさかった、かも?
一応、ナチス・ドイツを素材として、その素材を自由に用いた内容である。
人造人間というかサイボーグというか、独特の能力を与えられた者や、
タイトルロールでもある、首だけの女性、
それに、その手のものを研究している研究者、
さらには、大戦下で虐待・虐殺の対象となるユダヤ人やポーランド人、
ソ連の侵攻等が起きる中でのドイツ軍人たち、
こういう登場人物が織りなす物語である。
この劇全体を貫いているのは、哀しい話であるが、
しかし特に前半は、ワイドショー的、あるいはクイズ番組的な
喜劇的要素が多く、笑いも多い作りである。
ブラック・ユーモア的なものも多く、その着想の奇抜さと豊富さには
敬服せざるを得ない。
ただ、多分に私の好みの問題かもしれないが、この作品については、
「笑い」部分と「本筋」部分が別物のように感じられてしまった。
最近私が観た作品の中では、例えば、古典であるシェークスピア「十二夜」
http://stage.corich.jp/watch_done_detail.php?watch_id=145206
や、路地裏月光堂さんの「時の女」
http://stage.corich.jp/watch_done_detail.php?watch_id=147060
など、本筋はしんみりさせるものでありながら、かなり強烈な笑いの要素が挿入されているものを観ていて、
そちらでは、相反する要素が、他方の邪魔をすること無く、
むしろ相乗効果を上げていると思える。
しかし、本作では、前述のような「TV番組的」笑いが、
本筋と別物であり、やや「本筋」の足を引っ張っている箇所もあるように感じられた。あくまで私の感じ方であるが。
さて、役者陣では、(これも個人的感想だが)何といっても、
首だけの女性エマ役である小岩崎小恵が秀逸と思えた。
彼女の表現は、首から上だけの動きと、顔の表情、そして台詞回しだけに限られるのだが、ピュアーな性格が見事に表現され、
そしてそのピュアーさゆえの切なさも伝わっていたと思う。
そして、後半は、諧謔的要素は影を潜め、ラストは
エマと科学者の2人だけになる。
この幕切れも効果的に思えた。
評価は一応☆4つにしました。
前半が残念なので3つにしようかとも思いましたが、
ラストが良かったので、今回は4Pとしました。