満足度★★★★★
ヅラと宇宙
荻窪に雨の中行ってきました。
拳骨喫茶で無口な役者たちに給仕されつつ
げんこつ団の歴史を映像で振り返りながら、
この劇団の魅力が少しずつ自分のなかで言葉になってきた気がしました(笑
げんこつ団と似た劇団というのは、
実はほとんど無いな、と思っていながらも、
ボンヤリと何かに似てるとは思っていたのですが、
それは、実は「能」なのかな、と思ったのです(冗談ではなく
げんこつ団というのはかなり特殊で、
女性だけの劇団だからか、
全員スーツにヅラでも装着し、無表情にバク転でもしだせば、
それこそ誰が誰だか分かんなくなってしまいます。
スタニスラフスキー?なにそれ?
みたく、物語の起伏の中で感情の発露とかそういうんは全くなく
(ただ最近の若者やバーコードハゲのオッサンがキレたりとかは勿論あります
まるで新橋の鉄道広場のオッサン達を
水槽の中で飼って
対北朝鮮用の秘密工作員に育て上げ、
うっかり新興住宅地にばらまいたらこうなった、みたいな(苦笑
予測できない何かとして描いています。
「おおロミオ・・」
とかそういうんではなく、どっちかというとジュリエットがいきなり
「ロミオ殺す(ブスリ」
みたいなエッジの効いた物語の中で
登場人物たちがヅラをかぶって逃げ惑うような・・。
その中で表情というのは、記号的な役割しか果たしません。
自分はこれが、能で言うところの、
無表情のなかの宇宙とでもいうのか・・
演者が芸術家を気取るのではなく、
あくまで技術者として、自分を無にして
舞台の上に存在しています。
これがここまで徹底された舞台と言うのは実はなかなかありませんし、
これより上のものとなると、もはや能などくらいしか思い浮かびません。
主宰がバスターキートンを好きであるというので(自分も好きですが(笑
いろいろ思いを巡らせて、
日本の舞台芸術で近いものと言ったら・・と考えてみました。
どうも観客の数を見る限り、
一般的にげんこつ団の凄さが認知されていないような気もしますが・・(苦笑
こんな劇団は歴史上最初で最後なんではないかと
最近ますます思うようになりました。
100年後の人たちが残された映像資料を元に
現代の人を羨むとしたら、
僕ならナイロンといった大舞台などではなく、
げんこつ団のような摩訶不思議な劇団だと思います。
P.S.
ちなみに主宰が最初の入団志望者に聴いた言葉・・
「ヅラ大丈夫ですか?」
しびれたッス!(笑