満足度★★★★
円熟と破格と
落語狂で知られるコラムニストの堀井憲一郎は、『週刊文春』の長期連載「ずんずん調査」(昨年連載終了)の中で、柳家喬太郎を「2010年度 笑わせる落語家」の五位にランキングしている。
「聞かせる落語家」
1、立川談志 2、立川志の輔 3、立川談春 4、柳家さん喬 5、柳亭市馬
「笑わせる落語家」
1、柳家小三治 2、春風亭昇太 3、柳家権太楼 4、春風亭小朝 5、柳家喬太郎
個人のランキングではあるが、年間四百席以上の落語を鑑賞してきている堀井氏の識見は、その落語に関する書籍を読めば至極妥当なものだと納得できる。立川志らくや柳家花緑らを押さえての5位、ご本人は面映ゆく思われているか、俺様ならば当たり前と感じているか、それは分からないが、少なくとも喬太郎師匠が、中堅の落語家の中では、安心して聴ける中の一人だという事実は動かせまい。
口跡がはっきりしている落語家なら他にも何人もいるが、喬太郎師匠の場合、“ほどよい癖”があるのがいい。毒がかなり効いているのである。古典も新作もやるが、新作に古典の味わいがあるのがいい。人間観察が優れているが故だろう。そこには昭和の懐かしさと平成の新奇さが併存している。