うれしい悲鳴 公演情報 アマヤドリ「うれしい悲鳴」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    戯曲こそ素晴らしい
    みなさんあまり指摘していないので書きますが、戯曲が非常によくできています。岸田賞を取ると思います。

    もちろん、改善できることは、演出面も含めていろいろあるのでしょう(厳しい評価をする方が指摘する点のいくつかには同意できました)。しかし、「大爆破」ですから、はなから上演されるものの完成度は目指していなかったと思われます。それにしても、戯曲の完成度は非常に高い。

    物語の構成に破綻がなく、伏線がきちんと機能しています。古典的な結構を備えていると言いたいほどです。語りの使い分けも見事で、平田オリザ以降の口語ダイアローグと野田秀樹的モノローグが、自由自在に使い分けられていました。具体的なことはネタバレBOXに。

    ともかく、これだけ多形的・多義的な意味作用を含みながら、物語としてきちんと構築された戯曲を、評価しないわけにはいきません。ぜひ公刊していただきたいと思います。

    ネタバレBOX

    痛みを感じない男が、かつての事故について、死者の肉のうちに閉塞することで逆に全宇宙と一体になる経験を語るところは、カタリの力が全開でした(役者ではなく戯曲が)。ライプニッツや西田幾多郎に通じる形而上学的ビジョンを、言葉の力で舞台上に出現させることができていたと思います。

    また、対話の中で、天皇制をめぐるやばい結論に、登場人物と観客が同時に思い至る瞬間は見事でした。そのあと、ちょっとそれに言及しすぎたのは残念でしたが。

    日本的権力構造(空虚な中心、責任者なき暴力)を批判するというモチーフは、観客に勝手に気付かせてぎくりとさせておいて、暗示的に展開した方がよかったかもしれません。近年の野田秀樹もそうですが、作品自体は多義的なのに、観客を政治的メッセージの側面にだけ注目させてしまうきらいがあります。

    それにしても、と再び言いますが、この時期に東北大震災のモチーフに単純に引き摺られない戯曲を作り上げた広田氏の知性は賞賛されるべきです。柴幸男の「テトラポット」がその点で残念なことになっていたのと好対照でした。

    私はときおり、放射能に過敏なひとたちのことを思い浮かべましたが、観客がそうやって個々に何かを思い浮かべる程度にモチーフを抽象化して、普遍的な物語を構築できていたと思います。天皇制ももうちょっと抽象化してほしかったけれども。

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    2012/03/14 01:06

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