テトラポット 公演情報 北九州芸術劇場「テトラポット」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    まだまだ変化中
    いつもの、断片的な台詞や場面の連続がやがて「大きな物語」に
    集約していく…はずが、今回あうるすぽっとの、余りにも大きな
    スペースを持て余してしまったのか、演出・選曲・台本共にだいぶ
    健闘しつつも、以前の作品に比較すると、やや一歩、といったところ。

    ただ、役者の演技と台詞回しには、柴氏独自のユーモアと機知が
    相変わらずみられるので、次回作はより自然に空間や物語を乗り
    こなせるんじゃないか、と強く思いました。

    あうるすぽっと、ほぼ満席、という事実に、柴氏、そしてままごとへの
    期待を何より強く感じましたね。

    ネタバレBOX

    舞台をハッキリとした具象(具体的には校舎の教室)に設定せず、
    入り口部分の枠組と、椅子、黒板だけの簡素なものにした方が
    演出出来る幅が広がったのでは、とまず観終わっての感想。

    以前の作品と同じく、教室が海の中、校舎の屋上、主人公の家、
    その他諸々とどんどん変わっていくので、なまじ教室のセットが
    残っていると、イメージが阻害され残念だな、と。

    物語の内容は…うまくいえないですね。主人公・三太は、今はただ
    独り土地に帰ってきた男であり、その姿はそのまま陸から海へ
    戻ってきた、先祖がえりを試みた哺乳類、人類になぞらえられます。

    三太が事故で、はたまた自殺を試みて海で溺れたのか、その辺の
    事情は定かではありませんが、意識を失った彼の過去の記憶と、
    46億年のあいだ連綿と続いてきた生命そのものの記憶とが幻想的な
    タッチで描かれていきます。

    台詞回しは言葉遊びを多用しつつも、洗練されて上手いな、と
    感じさせるものが多数。あと何気に、役者の演技、台詞に相当
    笑える要素が入ってきており、次回作以降に引き継がれる新
    基軸となる事をひそかに期待しました。柴氏は笑いのセンスも
    あるのでは、と思います。

    個人的に、中絶を迫られた女子が「この46億年続いてきた命が
    ここで終わってしまうんだよ…私はそれが悔しい、悲しい!」と
    叫ぶシーンに目頭が熱くなりました。そうか、そういう見方も
    確かに出来ますよね。

    最後、楽器の出来ない三太が楽団を指揮する姿と、海で溺れて
    もがき苦しむ姿とがオーバーラップさせられるシーンは、その
    発想の巧さと残酷さにすごく驚いたけど、

    楽団全員に途中ソロの見せ場をつくってのボレロ演奏は高らかと
    響き、決して観て損したな、とは思わせないところが、良い作品
    だったんだな、と、本当に思っています。今は。

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    2012/03/10 19:16

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