満足度★★★★★
確かに受け取った
演劇を理屈で見なければならない人は気の毒だと思う。
自分で演劇に関わっている人、関わったことのある人には、こういうシナリオは評価しにくいのだろうし、演出上の問題点とやらも(私にはわからないが)あるのかもしれない。
だが、学生演劇はほんの数回見た程度の私が、今回確かに受け取ったものがあった。それはこれまで見た数回の演劇では感じなかったものだった。
歳を取り、大概のことは本質やら理由やらわかるようになった一方、社会の中で神経をすり減らして徐々に病んでいる自分が、ちょっとした歌や芝居で生きる力だの勇気だのをもらうなんてことは、まずない。そんな簡単に力が湧いてくるぐらいなら、毎日家庭で仕事で人と触れ合い、よい芸術にも触れて生きてきて、今頃こんな苦しい思いをしているはずがない。
ところが、だ。
学生演劇を見終わった後は、若い人たちのすごいエネルギーを受けていつもクタクタになり、今回も案の定クタクタになったのだが、今回の演劇を見終わった後、なんだか不思議と心地よかったのだ。
若さとか必死さとか、芝居を愛する心だとか、多分それらのどれとも違う、何だかよくわからないのだが、輝かしく、暖かく、優しい波動のようなものが、私に向けて光のように放射されてきた。
偶然だとは思うが、タイトルになる「かわいい」という感情は少なくとも一つの要素ではなかったかと思う。アイドルを見て若い人が感じる「かわいい」とも、小さい子どもを見て感じる「かわいい」とも違う、男性が女性全般に対して感じる普遍的な愛しさのような感情。
男の子たちによる力み返った演技が発するエネルギーは、受け取るのにすごい体力が必要で、いつも帰りがしんどくてかなわないのだが、自分が元気でさえあれば、確実に心に届き、感動に変わる。でも今は心が疲れきって、病んでしまっていて受け止められない。
そんな私の心だが、まるで演じていた女の子たちの渾身の演技と踊りが、一生懸命治療してくれようとしていたように感じたのだ。こんな感想は彼女らに失礼だろうか。
大概のことはわかるようになったつもりの自分でも、この演劇に対する私の感情、神経の反応、疲労感、これらをうまく説明することができない。ただとにかく、ここ数年味わったことのない平穏な心地よさがある。
私は理屈っぽいが演劇には素人の、歳を取ったただの観客だ。そんな私の心に、彼女たちが投げかけてくれたすごく好意的な何かを、確かに受け取った夜だった。
心から、どうもありがとう。