復活 公演情報 ピーチャム・カンパニー「復活」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    意義のある野外劇上演
    野外劇と言うのを観る機会が少なく、ピーチャム・カンパニーが東京タワーの下で上演するというので、興味を持って出かけた。

    鑑賞の手引きとなるHPの関連記事紹介や周辺ミニツアーなどもきめ細かく行っていたのがよかったと思う。

    F/Tトーキョーの参加作品だったため、時期的に寒い夜の野外での公演で、平日の観客動員などは苦労されたようだが、悪条件はあるものの、じゅうぶん上演意義があるものと思った。

    年明けに作者・清末浩平氏の退団が発表され、東大駒場時代から観続けてきた者としてはこれが彼の劇団最後の作品となり、感慨深いものがある。

    ネタバレBOX

    東京タワーの点灯式のセレモニーを観客が共に見守るというオープニングに惹きつけられた。

    未曽有の大震災を受けて、日本国民が海外に散って移住し、再び、帰ってきた。日本はアメリカの一州となっているという設定。

    小松左京の『日本沈没』の続編のような始まり方である。

    放射能汚染からの避難の必要性が叫ばれていた時期なので、なんだかこの設定がうらやましくも感じられてしまった。

    本物の東京タワーが舞台装置であり、トラックやタクシーが縦横無尽に走り回り、劇場では出せないスケール感や開放感が楽しめた。

    野犬たちが転がり出て、踊る場面などは視覚的にもワクワクした。

    修学旅行を引率する女教師たちが、稽古場ブログの写真では傘をさしていて、劇中「ティム・ティム・チェリー」が流れるので、メアリー・ポピンズの趣向かと思ったが、本番では傘をさしていなかったので気になった。

    3人の女教師が中里順子さんを除くと、あまり活躍場面がないのが残念だった。

    この場面は、演出家のアイディアだとのことで、聞いてみたいところだ。

    メッキー・メッサの夢とも妄想ともつかぬ家族の食事の場面なども、走るトラックの上で演じられるので、ロードムービーのような空間的効果が感じられた。

    被災地の犬を安楽死させるために、メッキーが犬をナイフで刺殺し、やがて狂気をはらみ、東京へ帰ってからも野犬を殺し始める。

    メッキーは自分の身代わりに殺してくれたのだという少女ネロ(日ケ久保香)。

    メッキーの神保良介さんが、ヌーベルバーグの映画の主人公のようで、適役で好演していた。

    しかし、実際に被災地の犬を刺殺することが安楽死とは到底思えず、この設定には違和感を覚えた。

    物語の後半になると、土産物屋で買った東京タワーの小さな置物を小道具に使うなど、小劇場的なちんまりした演技になり、野外劇のスケール感がしぼんで失速感がぬぐえなかった。これはネット批評でもほかのかたが指摘されていたが。

    ネロの独白などは、よくも悪くも、何度も繰り返してきた清末浩平氏の好むアングラ小劇場的純愛場面であり、日ケ久保さんが小柄な女優ので、熱演はしているが、広場である舞台の広さに負けてしまっている印象だ。

    また、当初聞いていた話よりも、冒頭の場面以外、東京タワーが思ったほど復活の象徴として物語の核にはならず、核は「犬」で、東京タワーは単なる借景になっていたのは残念。

    東京タワーの近くにある南極の樺太犬の像から、共に置き去りにされた南極と福島の犬を対比するなど工夫もみられたが。

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    2012/01/06 21:22

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