節電 ボーダー トルネード 公演情報 クロムモリブデン「節電 ボーダー トルネード」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    作り手の内心の鮮やかなスケッチにも思えて
    23日と大楽を拝見。

    単純にひとつの印象がやってくるのではなく
    いくつものニュアンスが鮮やかに組み上がってやってくる、
    それは、今を生きる作り手の
    心風景のコラージュのようにも思えて・・・。

    刹那の寓意が緻密に重なった作品であると同時に
    今、現れ来る心情の
    秀逸な描写力に圧倒される作品でもありました。

    ネタバレBOX

    冒頭のシーンからなにかがすれ違った感じがあって、
    その感覚が残ったまま、
    次のシーンが重ねられていく。

    そしてダンス、最初はただその動きに目を奪われているだけ・・・。

    一つずつの事象がそのまま物語として膨らんでいくわけではない。
    それは、パズルのように思えて・・・。

    でも、少しずつ世界が解け
    竜巻や刑務所、
    それぞれに広がっていくうちに、
    観る側も単純に物語を求めるというよりは
    それぞれのエピソードが紡がれていくというようり
    風景のように伝わってくる。

    冒頭の無関心さも
    その裏に現れてくるものも
    ダンスの軽さやポップさも
    竜巻も牢獄も病院も、
    そして創作という薬も・・・、
    ダンスにニュアンスが取り込まれ
    それらが感覚に置き換わって
    作り手の心風景のように観る側に広がっていくのです。
    物語の進展の中で
    心の移ろいの一つずつの感覚の表現へと変わっていく
    それらは、時に高揚し、あるいは抑制され
    制御をハズレ、時には暴れ出し・・・
    やがては心の風景から
    現実の時間へと至る・・・。

    役者たちの演技が圧倒的に磨きあげられていて
    その刹那の表現のテンションを支え
    観る側に伝わってくるものに曇りがない。
    笑いをとる部分にもぞくっとするような切れがあるし
    いくつものシーンに目を見開くようなミザンスが立ちあがって
    観る側を圧倒する。

    後半から終盤にかけて、
    妄想の縛めから解放されて日々の現実に逃げ込んでいく表現には
    強いグルーブ感がありました。
    妄想の世界から
    よく現実まで世界をつなげ流しきったと思う・・・

    そして最後のシーンで繰り返されるあのダンス・・・
    膝の揺らぎが生まれ、
    観る側が前のめりになる刹那光が落ちる。
    その瞬間、ダンスのニュアンスと
    舞台の妄想と現実の色がすっと重なって・・・、

    23日も観終わった時には
    その雰囲気に完全に捉われていたのですが
    大楽の役者たちの演技はその時と比べてもさらに
    さらに熱伝導率がよくなっているような印象があって
    その分観ていて高揚感も強かった。
    初日はB列だったので
    役者の表情に圧倒されたのですが
    大楽はH列で舞台全体の俯瞰のような印象で観ることができて
    それが重なりあってさらに惹きこまれ感が強くなったようにも思えて。

    多分作り手にしてみれば、
    心風景の緻密なスケッチだったのと思うのです。
    それらを色鮮やかに観る側に流し込む
    役者たちの技量、さらには照明や音響、舞台美術の秀逸もあって。
    舞台の力は、観る側にやってくると
    更なるふくらみへと変わっていく。
    観る側がコントロールしえないような踏み込み感が
    やってくる。

    終わってみれば単に軽重や色合いだけではない
    軽躁から軽鬱のあいだを行き来する中庸な想いの風景のスケッチを
    ぞくっとくるような解像度と
    POPさ、
    さらには洒脱さが生み出す更なる高揚とともに
    受け取ることができました。

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    2012/01/03 21:42

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