プライド 公演情報 TPT「プライド」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    同性愛者たちが50年の間に手にしたのは「Pride」
    「1958年、2008年」「社会の大きな変化をはさんだ2つの時代の2つのラブストーリー」というチラシの文章は、読んでおいてよかった。

    役者たちの演技が素晴らしい舞台

    ネタバレBOX

    一見「あれっ?」って思ってしまった。
    「2つの時代を挟んだ」というのが、てっきり同じ人が年齢を重ねていくものだと思っていたので。
    役名も、設定も同じ2つのストーリーなので、最初はちょっととまどってしまった。同じ役名だけど、別の人生を物語るストーリーということだった。
    それがわかってからは俄然面白くなってきた。

    つまり、1人何役というのは、舞台ではよくあることなのだが、役名が同じなのに、別人で、それに絡んでくる人たちの役名も同じ、設定も似ている、となると、役者の中での切り替えが非常に難しいのではないか、ということだ。
    つまり、同じ役名で呼びかけたとしても、相手どころか自分も、先の役とはまったくの別人になっているのだから。
    特に、馬渕英俚可さんの、その変化には目を見張るものがあった。
    まったく別人になっているのだ。

    58年は、どこか陰鬱で、秘め、陰がある人々。その50年後は、弾けていて、会話のテンポも早い人々。
    そんな大きな違いがあり、ゲイのカップルと男女のカップルの微妙な三角関係が描かれていく。

    58年の同性愛者は、「病」であり、「矯正」することが必要であった。「カミングアウト」などは考えられず、自ら辛い「治療」を選択するというラストにつながっていく。
    58年の彼ら3人ともは、そばにいても孤独であり、その溝を埋めていくことはまったく考えられない。

    そして、08では、一変して彼らを理解しようとするマスコミが出てきていたり、彼らが出会う場所や商売までもが成り立っている世界となっている。
    だから、ラストは、ちょっと微笑ましい光景になっていくのだ。

    50年という歳月で、同性愛者を取り巻く環境は大きく変化してきており、彼らが自ら戦い手にしたものでもある。

    その象徴が、08年に彼らが見に行くゲイの祭典「ゲイ・プライド」なのだ。

    つまり、この50年の間に彼らが手にしたものが、まさに、その「Pride」ということなのだ(だからタイトルには、定冠詞theが付いているということか? よくわからないけど)。このタイトルにすべてが込められていると言ってもいいだろう。

    ゲイの関係と恋愛は、こうした歴史を踏まえて見せられると、簡単に男女の恋愛に置き換えることができないので、個人的には、共感できるところはなかったのだが、「孤独」や「相手を想う」という点のみからは、なんとか見ることができた。
    また、男性同士のラブシーンも、観るのは結構きついものがあったのも確かだ。

    しかし、とにかく役者がうまい。
    間や沈黙の間隔が素晴らしいのだ。
    台詞というか、呼吸というか、そんな感情の込め方、見せ方が。
    そして、時代が変わること(役が変わること)での、テンションの変化は凄すぎるのだ。
    本当に4人ともが素晴らしい演技だった。
    その演技で、舞台に釘付けになった。

    つまり、この作品は、彼ら役者たちの素晴らしい演技と台詞を楽しむものということなのだろう。
    もちろんそれは、シーンの重ね方、余韻の残し方など、丁寧に気持ちを表現していく、演出のうまさもある。
    立ち位置、人との関係、セットの使い方、いちいちが憎い配慮に溢れていて、凄いとしか言いようがないほどであった。

    実際、涙ぐんでいたりする表情まではっきり観ることができる、前方の席がベストだったような気がする(指定席だから移動はできないけど)。
    このサイズの良さがあったと思う。

    ただ、ストーリーがもう少し面白かったらなぁ、とも思う。

    そして、須賀貴匡さんて、朝の連ドラ『カーネーション』に出ていたあの人だったんだと、舞台観て知った。

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    2011/12/23 17:24

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