雑種愛 公演情報 角角ストロガのフ「雑種愛」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    ただ事ではない!!
    本音と建前を使い分けず、欲望に忠実であり動物的で本能的でもある常識から一歩ズレた人間模様と主人公のピュアネスの対比が万華鏡のようにくるくると鮮やかに彩られ、夢から突き放されても尚、夢のなかを永遠に漂っていてるようなあの感覚をあんな風に描けるのはすごい。

    ネタバレBOX

    早熟性早老症を煩うひとりの少年と彼をとりまく世界のはなしが少年の自室、リビングルーム、病院の診察室、バイト先の漫画喫茶のカウンター/フロアー、路上というあらかじめ、舞台装置によってセッティングされた6つの場所で展開される。
    それはなんだか青年の脳内を具象化した迷路のような雰囲気で、これらの場面が同時多発的に描かれることにより、物語がより重層的で複雑な構成をなす。
    このような方法自体には斬新さや新鮮味はないかもしれないが、その空間設計や、横断する群像の描き方は一目で角田さんのものだとわかる独創的な世界観だ。
    それは愛されたいのに、愛せない、愛したいのに、愛さない。なんてアンバレンツだったり、どうして自分ばかり?という身のつまるおもいがするような過剰な被害妄想からはじまる。
    そういったフラストレーションの『種』の蓄積が意識下に宿るエゴイズムに触発されると、正しいとされてきた『常識』から意識が一歩ズレる。
    そのズレによる溝は歪みを生み、それは深くなるごとに本音と建前を使い分けるという『理性』を失い、欲望に忠実であり動物的で本能的でもあるという『新しい価値観』が『開花』する。
    しかし本人たちはそれに気がつかない。
    『エゴ』はあらゆる喜怒哀楽をしのいで増殖していく。
    そしてエゴに染まった人間は善悪の判断がまったくつかない。
    だから、出会ってはならないひとと出会ってしまったときに運命を感じてしまったり、やってはいけないことをすることに美徳を感じる。それらに良心の呵責は伴わない。
    だから、行き着く先は破壊であり、破滅的でもある。
    それを、ギリギリのところで食い止めるのが主人公の少年のピュアネスだ。
    しかし、ピュアであるが故に彼はある罪を犯してしまう。
    『愛されたい気持ち』とは『エゴ』にしかすぎないのだろうか。
    そしてそれは、愚かであるものか。

    この作品はそんな風にしか生きられない人間たちの暴力的な不器用さが右往左往するさまを、まるで蟻の『生態』を観察するかのような視点を観客側に持たせて快楽を与えていた。
    終盤、突拍子もない事故で少年の父親死んだり、彼の恋した女の子が実は年をとらない病気だったという驚きのカミングアウトは「もっと酷いことが起こればいい。」「ここで人が死んじゃえばいい。」という観客側の『エゴ』に応えるためのサービスだったのだろう。
    そんな『ありえないこと』がつづいていく妄想チックなドラマに家族、恋人、障害というシリアスな問題を乗り越え、生まれ変わろうとする少年の心象風景が『草原の芋虫が羽化する瞬間にみた夢』としてメタ化され、その夢が現実に突き放されて、誰かに踏みつぶされたとしても尚、夢のなかを永遠に漂っていたい願望やその心地よい感覚を、記憶のフィルムをひきのばしてなんども再生しているかのようにも受け取れる。そんな風にして、観る者の想像力を羽ばたかせる角田さんのセンスはやはり、すごい。そして、それは、唯一無二のものだ。

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    2011/11/29 06:59

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  • ありがとうございます!!そんな風に言っていただけてとても嬉しいです。次回公演もわくわくしていただけるよう努めます。ご来場、素敵な感想とても嬉しいです!ありがとうございます!!

    2011/12/01 16:48

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