満足度★★★
3人で描く数奇な人生
ある時は男として、ある時は女として国家間の関係を取り持ちながら激動の時代を生き、孤独に死んで行ったシュヴァリエ・デオンの半生を、3人のパフォーマーが日本的要素をスパイスにダンスや魔術的な視覚演出で描いた作品でした。
冒頭にギエムさんのモノローグでエオンの人生が簡潔に語られ、それに続く様々なシーンで色々なエピソードが象徴的に描かれる構成だったので、馴染みのない人物についての物語でしたが分かり易かったです。
前半は色々な試みを盛り込み過ぎて、それぞれの要素のクオリティーが高いのに散漫な印象になっていて残念でした。終盤は物語的には盛り上がりのない内省的なシーンですが、内容と演出が合っていて、とても美しく魅力的でした。
文楽や和太鼓など日本文化の要素が用いられていましたが、懸念していた程には悪い意味でのエキゾティシズムが打ち出されていなくて、違和感を感じずに観ることが出来ました。
照明や衣装などのビジュアル面は良かったのですが、頻繁に用いられる効果音が安っぽく感じられました。これだけ高いレベルのダンサー達のパフォーマンスだと身体の動きだけで色々伝わってくるので、説明的な効果音は不要だと思いました。
ギエムさんの人間離れした身体能力が素晴らしく、ちょっとした動きにも細やかな神経が感じられて美しかったです。歌ったりコミカルなシーンもあり、チャーミングな一面も見られて楽しかったです。
マリファントさんも勇ましさから繊細さまで表現の幅が広く、品の良い色気があって素敵でした。ルパージュさんは演出のついでに少し出演する程度かと思っていたのですが、他の2人のダンサーと対等に渡り合っていて驚きました。
アレキサンダー・マックイーンの衣装は過去にパリコレで発表した作品を思わせるものあって、見応えがありました。もっと色々な舞台衣装を手掛けて欲しく思いました。若くして亡くなってしまったのが非常に残念です。