4×15 公演情報 北京蝶々「4×15」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    鮮やかな個性の切り出し
    作品に織り込まれた
    色の異なるシュールさに惹かれて
    あっという間の1時間。

    役者たちの
    現わす力のようなものがしっかりと機能して、
    4つの作品それぞれに、
    観る側の異なる感性が解き放たれた感じ。

    おもしろかったです。

    ネタバレBOX

    ・田渕彰展「エアデート 完全版」

    冒頭のちょっとした客いじりをゲートウェイに
    実から虚に踏みいる感じが
    丁寧につくられていて、
    すっと、エアデートの世界に観る側も封じ込められてしまう。

    そのエアデートの
    何とも言えない初心者マーク感が絶妙なのですが、
    物語はその可笑しさでは終わらない。
    その虚が解けてさらに踏み込む世界に力があって。

    きっちりと持っていかれてしまいました。

    ・岡安慶子「恋愛で飯を喰う人」

    風俗嬢、普通にことに及ぶと思いきや
    ちょっと意外な展開が作り出されていきます。

    一人芝居なのですが、
    役者の瞳に映るものがしたたかに作りこまれているというか
    視線の距離や焦点合わせが
    息を呑むほどに安定していて。
    だから、キャラクターが対する相手への
    距離感や想いの移ろいや濃淡が浮くことなく
    その場としての不条理な言葉が
    見えない客を鏡とするように
    質感をもって伝わってくる。

    客が帰った後の、
    行き先を失った視線に
    彼女の素顔が浮かび上がる。
    そこから垣間見える心情の
    すこし醒めた感触を持った生々しさに
    思わず息を呑みました。


    ・帯金ゆかり「狼少女、都会に降り立つ」

    コンテンツ的にはワンアイデアのお芝居だと思うのですよ。

    でも、演じ手がもつ表現力が
    あれよという間に企画の瞬発力を凌駕して
    世界を舞台に組み上げていく。
    一つ間違えばとんでもなく薄っぺらい世界になりかねないものを
    常に観る側に広がるものよりもたくさんのもので空間を満たし続ける
    テンションというか力に圧倒されて。

    身体の切れももちろんあるのでしょうけれど、
    それにとどまらない、
    元々場ごとの空気の色をすっと現出させ、
    あるいは変化させていくような力が
    人並み外れてあることは十分承知していて
    でも、そうであっても
    こういうベクトルにもその力を発揮できることは
    けっこう驚き。

    前のめりになって見入ってしまいました。

    ・森田祐吏 「たった一人の地球防衛軍」

    恣意的な薄っぺらさが最初にあって、
    苦笑系の笑いかなと思わせておいて・・・。
    でも、それが、
    ゆっくりと膨らんでいく
    足腰をしっかりともった感覚に
    しだいに塗り変わっていく。

    演じ手の個性の強さが
    演技を一つに留めるのではなく
    彼が現わすニュアンスの間口の広さに繋がっていきます。
    どこかトホホな地球防衛軍の姿に
    実存感を裏打ちするお芝居の確かさが
    薄っぺらかったキャラクターの心情に
    次第に奥行きを与えていく。
    気が付けば、
    観る側は冒頭のベタで表層的な世界を足場にして
    ひとりの男性の心情に
    しっかりと取り込まれている。

    演じ手には強くキャラを立てることができる力があるので
    そちらが目立ってしまう舞台も拝見したことがあるのですが、
    この役者のメインディッシュというか
    性格俳優的な側面の秀逸や魅力を
    改めて認識したことでした。

    *** ***

    いろんな毛色をしっかりと描き分けた
    作・演出の力量も改めて再認識。

    公演数の少なさがとてももったいなく感じたことでした。




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    2011/10/30 09:22

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