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とりつくしま
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川崎市アートセンター「
とりつくしま
」の観てきた!クチコミとコメント
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ボム木偶(68)
満足度
★★★
目の前に、ない
なんだろう、人のからだ。その、動きの標本を、みるかんじ。
ネタバレBOX
なにもない、素舞台。ただひとつ、舞台と、客席の間に、大きな金属(?)のフレームが、無機質に設置してあって、舞台の中央部分は、客席からは、テレビをみるみたいに、フレーム越しにみるかたちになる。
スキンヘッドの男性ひとりと、小柄な女性がふたり。ゆったりとした、部屋着のような格好で、あらわれる。そして、それぞれ、舞台を、ただ、ひたすら、ゆっくり、ゆっくり、歩いて、歩いて、時折伸びたり、縮んだりしつつ、歩いて、歩いて、舞台の外れに、座る。歩いたり、座ったり、そのタイミングは、三人それぞれ、ばらばら。ひとりが立って、二人がそれぞれ座ることも、三人とも、歩くことも、ある。ばらばらに見えて、ときおり、関係が生じるかに見えることも。ひとりが立ち止まって、振り返ったり、その先に、もうひとりがいたりする。でも、そこから、物語が生じたりは、しない。気づけば、また、それぞれに、歩いて、歩いて、歩いて、座る。これが、終わりまで、およそ一時間、つづく。
音楽と呼べるような音楽は、無い。が、無音、というわけでもない。ゆっくりと、水滴の落ちるような音が、断続的に、続く。道路に通じる扉を開け放しているのか、録音したものか、車やオートバイの通り過ぎる、街のノイズも、頻繁に聞こえてくる。照明は、細かく調節されるが、暗い。終盤は、ほのかな青白さが舞台をつつんで、夜中に、起きだしてしまった部屋のようだ。
消え入りそうに幽かで、静かな舞台。物語のない能、のよう。体験としては、忍耐の必要な、つらいものだ。エンターテインメント性は、かけらもない。そして、そのぶん、僕の、なんというか、もののみかたは、揺さぶられる。これはなんだ、と思い続けているうちに、色々な、精神的な、体験を、感じだす。勝手に。
たとえば。ある場面では、男性が、歩いて、歩いて、歩いた末に、舞台の手前、客席側、フレームの外側に、舞台の方を向いて、座る。テレビを見るような格好になる。どこまでが舞台で、どこからが、そうでないのか。ゆらめく。そういえば、舞台が、あまりに動きのない場面のとき。客席の方が、よほど賑やかであることに気づく。観客は、僕も含め、こっくりしたり、もぞもぞしたり、必死に観ている。客席が、舞台のように感じる、そんな一瞬にはっとしたりする。
たとえば、動きが、ゆっくりにすぎて、ときおり、演者が、前に進んでいるのか、後ろ向きに歩いているのか、わからなくなったり。はっと気づくと、心がどこかに逝きかけてしまい、前後がつながらなくなったり。それでいて、舞台の終了の際には、あっという間に終わってしまったように感じて、終わりということが信じられないような感じがしたり。僕の中の時間が、思い切り引き延ばされたり、部分的に消されたり、小さく圧縮されたりする。
眠気と、戦っていた、ただそれだけのことかもしれない。舞台を基点に、頭の、心の、内側へと、ゆっくりと沈んでいく。目の前の舞台ではなく、演者たちは、こちらの頭の中にいる、そんな気になる、静かな、動き。ダンスなのか、なんなのか。僕にはなにもわからないけど、観なければ、思ったり、感じたりすることのなかったものを、思い、感じた。きっと家にいたら、なにも思うことはなかっただろう。
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2011/10/26 15:52
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