山 公演情報 劇団ヨロタミ「」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    民バージョンを観た
    まず、セットの作りこみが素敵だ。片田舎の家庭のある風景。
    舞台は全体的に楽しかったのだが、物語自体はシリアスなはずなのに、やたらと笑いを取ろうとする為に、舞台がコミカル化してしまった感は否めない。この本なら、特にコミカルに仕上げなくても良かったような気もするのだが・・。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX


    物語はイチ子の少女期に相思相愛だった相手、賢太郎の思想が赤だった為に、憲兵から睨まれ賢太郎の家族は辛い思いをしていた。そんな折、賢太郎は家族の為に、赤ではない証拠として入隊に志願する。こうして離れ離れになってしまった二人だったが、賢太郎は戦死し、残されたイチ子は別の男性、藤崎と結婚し子供も生まれたのだった。

    一見、平凡な幸せを掴み取ったかのようなイチ子だったが、イチ子は死んだ賢太郎を忘れるどころか今なお、鮮やかに思い焦がれるのであった。

    そんなイチ子の心を知りながら生活をしていた夫・藤崎だったが、イチ子の賢太郎への恋慕の心に耐えることが出来なかった藤崎は離婚を申し出る。このとき、藤崎は「自分自身に勝てなかった」と己を攻めるも、イチ子はこの申し出を受け入れ、そしてなお、かつて賢太郎とハイキングに行った四季折々の山の風景を何枚も描き続けるのであった。まるで山が賢太郎の身代わりのように・・。

    一途に一人の男性を想い続けて、他者に自分の隙間を決して見せなかった女・イチ子の一生を綴った物語だったが、彼女に関る郵便屋や孫、お手伝い、父の留吉があまりにもコメディだった為に泣けるシーンで泣けなかった。苦笑!

    また、留吉役の河嶋健太のセリフカミが目だって、その度に、舞台上の空気が遮断されて残念だった。更に一部のキャストの演技力がイマイチ。一方で、少女期イチ子役の水谷千尋、賢太郎役の大矢三四郎の二人の演技力があまりにも素晴らしく、二人の淡い恋が引き裂かれる場面では完全にその世界にどっぷりと浸かれて感動のあまり、うるうる・・とした。また、水谷が歌う「カチューシャの歌」のなんと美しいことよ。天使の声。

    こうして時が過ぎ、やがてイチ子は終わりのときを迎える。しかし、郵便屋や遊びに来ていた孫たちに囲まれてイチ子は幸せそうなのだ。ずっと想い続けた思いは天に昇華して山の風景に溶け込む。

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    2011/09/22 22:20

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