満足度★★★
欲望から極楽は遠い
欲望という名の電車に乗っているのは私たちも同じなのだと思う。テネシー・ウィリアムズのどん底を生きる人間への率直な目と愛が感じられる秀作であり、今回の脚本も原作にほぼ忠実で、原作のそういう良さがグローブ座の舞台からも伝わってきた。原作にある音楽や効果音へのこだわりもよく消化工夫され好感のもてる演出になっていた。
だが「死と裏合わせにある欲望」を全身で表現しながら生きるアメリカの底辺の人々を日本で再現するのは難しい。日本人はやはり控えめで礼儀正しく、やさしいからだ。
女型のブランチには救いがあった。(同時に逃げでもあったと思うが…)女性が演じた時のさらなる痛々しさは想像すると苦しくなる。スタンレーは好演だった。ミッチー、ステラは上品過ぎた。いや日本的に過ぎたと言うべきか。日本での公演が絶望的なほど難しい演目だと思うが、それにしては善戦していた。