Caesiumberry Jam 公演情報 DULL-COLORED POP「Caesiumberry Jam」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    チェルノブイリ原発事故のその後を題材に
    舞台には湿った土が盛ってあり、この土が壁をスクリーンに見立てた映像に見事にマッチしてリアルな雰囲気を醸し出す。映像なくして物語は成立しないほど、時の流れの残酷さを描写していた。登場人物の名前から察するとやはり場所はロシアの片田舎ナジロチ。原発事故から30km離れた村での情景を綴った物語。クリニカ演じる中村梨那の子供子供した元気溌剌な表情や行動がとっても素敵だ。ナターシャ役の石丸さち子のおっかさん的な演技力が群を抜いて秀逸。惜しむらくはジーナ役の加藤泰子が少々あがってたようでカミが目立ち、ギクシャクしていた。後半は良くなると思うが・・。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    前半、コメディかと勘違いするほど、笑いのネタ満載。後半はゆっくりと弧を描くようにシリアスになっていく。こういった構成は相変わらずお見事だった。

    1986年5月、原発事故は起きた。そこから30km離れたナジロチでも禁止区域のようだが、ここにこっそり数家族が暮らし、自らで学校のような場所を確保して子供たちの教育もしていた。舞台の始まりは元気な彼らが和気あいあいと暮らす情景を描写し、いかにもヨーロッパ的な香りで舞台を満たす。

    そんな彼らを使者(保健省の小役人)が視察し指導をするのだが、言う事を聞かない住民はいつものように数種のベリーを採取してジャムを作り食し、木の実でワインを作り飲んで人生を謳歌していた。タイトルのセシウムベリージャムは、高濃度に汚染されたベリージャムという意味だろう。

    クリニカは六指の手を持ち、うさぎは片足の奇形が生まれ、やがて誕生した新生児は、無脳症だった。無脳症児は妊娠26日くらいにビタミンAの大量投与、葉酸の摂取不足が一因と言われているが、セシウムでもなるのだろうか?

    やがて、彼らはひとり、またひとり・・といなくなってゴーストタウンと化してしまう。愛していた夫を失ったリューダの想いや彼らと関わった思い出をカメラマンの記憶として描写した劇だったが、悲惨な景色や獣奇的な風景はない。ただただ淡々と綴っていった物語だ。人々がそこで暮らし、笑い、酒を飲み、幸福だったそれらが崩壊していくさまをまるでドキュメンタリーのように描写していた。その写しには作家の意図は何も感じられない。また訴える言葉もない。けれどその静かなる叫びはそれで充分なのだ。

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    2011/08/24 17:31

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