満足度★★★
アイデンティティ
ストーリー展開を台詞に頼らず、映像や身体表現による視覚的演出を中心にして描いた家族の物語で、少女の孤独感がクールに表現されていました。
「感動の~」と謳う宣伝文句からベタなストレートプレイを想像していたのですが、90年代に流行ったマルチメディアパフォーマンス的なスタイリッシュな作風でした。
日本人の父と韓国人の母を両親に持つ14歳の少女が学校でいじめられ、自己のアイデンティティについて悩み、インターネット上で新たな自分を演じて自身の存在を認めてもらおうとする物語で、少女は親と口をきこうとせず、韓国のテレビを観、韓国語を話す母を嫌悪する姿が日常的な動作を反復・増幅したシーンを通じて描かれていました。
台詞はあまり使われず、少ない台詞も対話には発展せず、常に一方通行だったのが印象的でした。
セットも小道具も衣装もグレーに統一していて無機質な感じが良かったです。父親はスーツ、母親は韓国風シルエットのワンピース、娘は制服に、それぞれの属性や思いが大きな字でたくさんプリントされている、思いきったデザインの衣装が楽しかったです。
抽象的な表現が多くても登場人物の心境が分かりやすい親切な演出だったのですが、個人的にはこのようなスタイルの演出にするなら説明的な要素を更に減らして緊張感のあるストイックな表現にしても良いと思いました。
身体表現はもっとギリギリ感を見せて欲しかったです。また、ビジュアル表現に比べて音楽が感傷的過ぎるように思いました。生演奏のギターは入れず、全部テクノ系の曲でも良いと思いました。