昆虫系[改訂版] 公演情報 鵺的(ぬえてき)「昆虫系[改訂版]」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    生き様の野次馬
    鳥肌ゾワーって立った。目の前で起きてるのは事件。比喩ではなく、物語だけど、現実の事件。しかも凄惨な。とてもリアルで、ゾクゾクするのに、観劇後の感触は決して不快にならないから流石です。

    ネタバレBOX

    見たくなくても見てしまいたくなるこの圧倒的な暴力っっっ!!!底で生きる者たちの生き様を覗き見る。それは明日は我が身なのだろうか??

    チラシのワンダーランド代表の方の紹介文以上に的確に表現するのは難しいけど。かといってマンガの闇金ウシジマくんみたいってモンギリで斬るのは安易だし。どこまで実際の事件に忠実かわからないけれど、人の欲深さと、地べたを這いずり回り生きるしか術のない現実が描かれ圧倒される。どうしてちょっと足を踏み外すだけでやり直しの利かない世の中なんだ、なんてキレイごとでは飯は食えない。生きるために必要なのは妥協と打算と諦め。終始、冷たく乾いた目をして蠢く登場人物達に、共感とも同情ともわからない、でも本性に訴えかけられる激しい感情を覚えた。

    社長のサタケは、借金でブラックリストに載って首の回らなくなった多重債務者に不当な金利で金を貸して、なおかつ自分の会社の社員にしてイジメて、あまつさえ自分を受取人にして社員に保険金掛けて殺している。

    舞台は社長の経営するスナック。スナックのママもホステスも、社長の言いなりで体を許し心にまで土足で踏みにじられる。そして社員もスナックの職員も皆が保険金殺人を黙認している。物語はそんな社長が殺されるまでをリアルタイムで描く。

    劇中、場違いなポップなメロディーで歌われるミュージカルアニーのパロディソング『明日があるさ』。社員と結託している保険屋の男は、明日なんかに希望を持てない地を這う者達の前で空々しく歌う。

    自分らが搾取している相手は人ではないみたいに扱われる姿には怒りよりも哀しみが浮かぶ。まるで、僕自身も諦めさせられてるかのようだから哀しい。

    物語の途中で唐突に事件の真相がニュースとして伝えられる。そして終盤、ずっと黙ってスナックの雑務をこなすバイトの男の激情でクライマックスまで一気に畳み掛ける展開は、ニュースで結末を知っているのに身震いしてしまう。

    救いは無い。でもそれでも良いと思える。見れて良かった。

    0

    2011/07/29 11:34

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大