夢(トポス)の国 シンクウカン 公演情報 演劇実験室◎万有引力「夢(トポス)の国 シンクウカン」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    寺山修司のラジオドラマをコラージュした作品
    確かにそうだったが、単純な構造に見えてしまった。
    ダイナミックでボリュームのある舞台ではあったが。

    ネタバレBOX

    真空管を思わせる透明な筒が数本立ち、中央の高い場所にはDJブース。下手後方にはバンド演奏用の楽器の一群。

    舞台は立体的であり、客席の通路も使うというのは、万有引力ならでは。劇場全体を舞台とするということだ。

    寺山修司さんがかつて作ったラジオドラマの数々をコラージュした作品であり、ラジオ番組の中で、それが次々と演じられる。寺山さんの声も流れ懐かしい。
    劇中ラジオ劇の中心になるのは『青ひげ』で、これはラジオの生放送という体で行われる。そのほかには『ガリバー旅行記』なども演じられる。

    確かに、コラージュ作品なのだが、この構成はいささか単純ではなかっただろうか。ラジオの放送を軸にラジオドラマを演じるという形態が、だ。
    つまり、劇中劇として順番に見せただけという印象が強い。

    意味ありげな登場人物も多々あるのだから、単なるラジオとドラマではなく、それもさらに重層的にするような深みや絡まりが見たかったのだ。

    とは言え、J・A・シィザーさんの音楽は、いつも素晴らしい。生演奏もその意味があった。せっかくの生演奏なのだから、バンドは舞台の中央にセッティングしてもいいのではないかと思った。ドラムの位置が中央のほうが聞きやすいということもある。

    もっと言ってしまえば、劇中劇の中心になっている『青ひげ』はとても面白く、ラジオという形式ではなく、これを舞台の中心に据え、J・A・シィザーさんの音楽劇(ロックミュージカル?)にして、そのほかのラジオドラマをそこから波及させたほうが面白かったのではないかと思った。

    つまり、ラジオの設定であり、劇中劇からいちいちラジオのDJに戻るところが、物語の世界から引き戻されるようであり、さらにディレクター、作家、プロデューサなどが出てきて、物語世界が薄められてしまう感じがしたからだ。それはもったい。

    彼ら、ラジオ制作側の登場人物はそれぞれの主張を代弁するのだが、それが少々鬱陶しい。ラジオとは? という講義を聞きに来ているわけではないからだ。いろいろな立場の意見を満遍なく聞かせる必要はなく、独善的であったとしても、1つの意見・主張をハッキリさせたほうがよかったのではないだろうか。

    また、ラストでプロデューサとディレクターが、まるで「この舞台まとめ」のような語り合いを行う。それは第三者からの視線で、他人事のようであり、舞台の熱気を興醒めさせてしまうには十分であった。
    そんな台詞で語り合うのではなく、舞台の上でそれを見せてほしいのだ。

    舞台自体は、とてもボリューム感があり、濃厚。そしてダイナミック。
    舞台上の構成も素晴らしい。

    ラジオDJと青ひげの第7の妻を演じた森陽子さんの、DJぶりや歌の説得力がとても印象に残った。シャープなダンスを踊っていた、石森・加藤・佐藤・園原の4人はカッコ良く、印象に残る。

    ラジオという設定ならば、例えば、ビジュアルなしで、真っ暗でほとんど何も見えない中でのラジオドラマだったりしたら、どんなに面白かっただろうか、とも思った。いや、無理なのはわかるけど。

    万有引力好きなんで、次回には期待したい。

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    2011/07/03 21:38

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