満足度★★★
奇妙な味わい
虫の名前をタイトルにした4本にエピローグ的な1本を加えた短編集で、状況や設定があまり明らかにされないままに展開する物語の中に人間の陰の部分が浮かびあがってくる作品でした。
中央に設置された畳2枚の周りに服が巻き散らされた空間の中で、煮え切らない人(虫?)たちが揉める様子が湿度を感じさせる演技で描かれていて、最後まですっきりしないのが逆に面白かったです。
『蠅』で男を殺して罪の意識に囚われながら年老いて行く女を演じた高尾祥子さんの方言で話したり謝ったりする薄幸そうな姿が魅力的でした。
『蝶』で冴えないのに男を引き寄せる女を演じた島田桃依さんの不思議な色気とユーモアも味わい深かったです。
特にそのような台詞や物が出てくるわけではないのですが、音楽や映像に昭和っぽいレトロ感があり、得体の知れない奇妙な登場人物、物語にマッチしていたと思います。
良く言えば統一感がある作品でしたが、それぞれの作品でもっとテイストを異ならせて変化があった方が良いと思いました。