IN HER TWENTIES 公演情報 TOKYO PLAYERS COLLECTION「IN HER TWENTIES」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    もの凄いドラマはないのだが、一人の女性としての物語はある
    どちらかと言えば、実験的な舞台なのに、すっと身体に入り、とても心地良い。
    美しくまとまりがあり、センスのいい舞台だ。

    その美しさは「過去」のことだから、ということもあろう。

    ネタバレBOX

    基本としては、1人舞台×10人なのだが、ところどころで見せる、台詞のシンクロがうまい。
    それは、戯曲や演出もあるのだが、役者同士の呼吸や声のトーンの合わせ方がうまいということもある。
    別の話題について話している2者の会話が、付いたり離れたり、でとてもいいのだ。

    21〜28歳までがリラックスした部屋着というのもうまい設定(衣装)だと思う。
    つまり、外出着に身を包んだ20歳と29歳が誰か他人に話している(フォーマルな会話)のと違って、よそ行きではない、本音を語っている(インフォーマルな会話)ように見えるからだ。

    女性の(こういう言い方は、差別的だったりセクハラだったりするのかもしけないが)、微妙な年齢である30歳を目前とした29歳が、20代を振り返る。さらにまだ先を知らない20歳が、まだ見ぬ未来の自分を語る。

    つまり、取り上げられた20代というのは、10代とは大きく違う。それは「就職」「結婚」や「自立」というキーワードが大きくなってくる。つまり、社会や人生(これからの一生)との関係で、何かを諦めたり、何かを目指したりということを「選択する」時代でもあるからだ。
    もちろん男性もそういうことにおいてはある部分同じだが、「30歳」への意識は女性よりは低い。男性にはあまり「30歳までには」という意識がないからだ。

    女性にとって微妙な20代。
    本人からすれば、いろんなことが起こっている。
    それは、もの凄いドラマはないのだが、物語はある、ということだ。

    特に「恋バナ」はとても重要(笑)。20代のほぼ全編で、思いを寄せた男性との関係が、ひょっとしたら、と思わせる甘いラストを含め美しく仕上がっている。
    たぶん、本当は、混沌とした時期だけでなく、いろんなドロドロとしたこともあったに違いないが、過ぎてしまったこととして語る29歳にとっては、美しい想い出となっている。
    「過ぎてしまったことはすべて美しい」というところか。

    それは、この舞台の形式になている、「誰かのインタビュー」に答えるということで、深い話までしていないということにもつながってくる。

    先に書いた「本音」を語っているようで、実は浄化された「想い出」を語っている。もちろん本音もそこにあるが、あえて触れないこともあろう。
    そういうパンドラの箱を開ける必要はないのだが。
    自分で語る自分の歴史は、都合のいいように改変されていくのはしかたがないのだが、そこのズレが少し見えてくると、さらに深みが見えてきたような気がする。もし、これが女性が描いた物語だったとしたら、たぶん結構な陰やトゲがあったような気もしているのだ。

    この舞台では、唯一、20歳の自分が未来を無邪気に語る姿は、すでに過ぎてしまったことを知る29歳にとっては、かなり厳しいものである。
    思い通りにならなかった9年間。
    しかし、後悔はまったくしていないところが潔い。
    自分が選んできた道には、迷いはあったとしても、間違っていなかったという自信のようなものがあるのではないだろうか。
    言い訳などをしない29歳の彼女はとても強くて美しいと思う。
    果たして、誰もがそういう姿でいられるものなのだろうか。

    そう考えると、「こうありたい」あるいは「こうであったらいいな」という願望が舞台にあったのかもしれない。いや、女性は常にそうなのかもしれない(と、男が勝手に思っているということかも)。

    男性から見た女性は美しい、ということでOKかも。

    劇場を出て帰りながら思ったのだが、30〜39歳編もあると面白のではないだろうかということ。例えば、今回の20〜29歳編上演から休憩を挟んで30〜39歳編を上演する、なんていうのは面白いのではないだろうか。

    しかし、男性編はつまらないだろうなと思うのだ(笑)。

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    2011/06/03 06:46

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