満足度★★★★
シニカルな復讐劇
円形の劇場を上手く使った演出で愛憎渦巻く人間たちの関係がシニカルに描かれていました。
昭和中期のちょっとレトロな雰囲気の中、女たらしのテレビ局プロデューサーが、関係する10人の女たちの恨みを買い、やりこまれてしまう物語で、巧みなやりとりで女の気を引く優男っぷりや、女の嫉妬が分かりやすく表現されていました。オリジナルの映画を見たことがないので、どこまで脚色されているのか分かりませんが、しっかりケラさんテイスト溢れる作品になっていました。
いつものナイロン作品に比べると大爆笑となるシーンは少なめですが、シリアスなシーンでも突然笑わせる絶妙の間の取り方は流石だと思いました。
ベテランメンバーの峯村リエさん、松永玲子さん、村岡希美さんの演技は抜群の安定感で迫力があり、女の強さ弱さの両面を見せ、また女同士の争いの凄味を感じました。
真面目に素っ頓狂なことを言うキャラクターを演じた緒川たまきさんのコメディエンヌっぷりが可愛らしかったです。
ケラさんが演出する作品は毎回スタッフワークも見応えがあり、今回もレベルが高かったです。
小野寺さんの振り付けによるスローモーションやストップモーションを織り混ぜた動きや、小道具の使い方が鮮やかでした。10人の女が勢揃いする第一幕のクライマックスのシーンは、台詞なしで身体表現だけで展開し、怖さと美しさがスタイリッシュに表されていて素晴らしかったです。
映像は今回は立体的なセットがないため、いつものようなイリュージョン効果ははあまりなかったのですが、切り絵(?)や手描き
のスライドショーや、ニュースや昔懐かしの「生コマーシャル」風の映像や、抽象的パターンの床面投影など盛り沢山で楽しめました。
衣装も時代の雰囲気が出ていて良かったです。