芝浦ブラウザー 公演情報 東京グローブ座「芝浦ブラウザー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    狭小空間のセットを生かした諷刺喜劇
    80年代、東京グローブ座の建設プロジェクトの段階からみてきたので、
    ジャニーズ事務所の専用劇場になったときは正直ショックで、それ以来初めての観劇。

    フライヤーのオシャレなイメージから、近未来のスタイリッシュなマンションの話かと思いきや、まったく逆の話で驚いた。
    上田さんらしい社会諷刺が効かされ、楽しめた。
    都市再開発から取り残された人々を描き、昨年のヨーロッパ企画の「USBサーフィン」とも共通する作品。

    ヨーロッパ企画の芝居を観たことがないという人に観てもらう目的もあって観劇を決めた。

    震災直後だけに「住む家がない」という問題はシビアな現実として迫ってきて、一緒に観劇した連れは
    被災地を思うと笑えない、と言っていたが。

    ネタバレBOX

    現在でも、都内で堤防沿いに違法建築を立てて住んでいるホームレスがいるし、90年代初頭、横浜みなとみらいで再開発が始まったころは、運河沿いにこれに近い光景がみられ、写真と共に記事にしたことがある。

    だから、この物語は決して遠い近未来の話には思えなかった。

    不動産会社の社員2人フジタ(井ノ原快彦)とオノ(音尾琢真)がPCの3D不動産物件シミュレーションシステムを使って、空室が多い高級マンションの内部を見る場面から始まる。
    実際、これに近いものは業界で活用されているのだが、未契約空き室が「販売用」に粉飾され、実際は空き室のほうが多いという実態に客席は爆笑。

    営業所に新配属されたフジタがマンション周辺の違法バラックのほうに興味を持ち、3Dでそちらにズームインし、住民たちの暮らしぶりを覗き見。
    ここから、舞台上の実物大セットで芝居が展開する。
    2人は、興味から、住民の一挙手一投足を観察しながらコメントし始める。
    この場面がとにかく可笑しい。

    井ノ原がNHK「朝イチ」のVTRを見ながら解説している時のような自然な語り口。アイドルらしくない親しみやすい雰囲気の人なので、こういう芝居にも違和感なく溶け込んでいた。
    音尾はヨーロッパ企画の劇団員と錯覚するほど、この劇世界になじんでいた。

    フジタはPCだけでは飽き足らず、実際、スラム地区に下りて行って、体験入居を始める。
    心配して音尾がPCで覗き見すると、「プライバシーの侵害」と怒る身勝手さがまた可笑しい。

    フジタが「自分の新居」を作る場面を見ていて、どんな狭小空間も、住む人のセンスでそれなりの空間演出はできるものだなぁと妙に感心した。

    66円均一のアウトレットショップ「SHOP66」の舟でやってくる本多力が、まるで幕末の食らわんか舟みたいで面白い。

    掃き溜めに鶴みたいな管理人さんを演じる芦名星が美しくさわやかで、印象に残る。

    自給自足がモットーのサバイバーの伊達暁は敬遠されて孤立しており、「USBサーフィン」の伝説のサーファー像とどこか重なる。

    フジタとオノはPCで覗き見していたとき、彼を勝手に「サバイバー」と名付けていたのだが、実際に「サバイバー」という通称であることを知って笑ってしまう。

    スラムにもいくつかのコミュニティがあり、対抗リレーなど運動会などが開かれているのだ。

    結局、バラックは立ち退き勧告で撤去されることになり、フジタは会社をやめ、文字通りスキマ産業のように、いろんな路上住居物件紹介のサイトを立ち上げるところで終わる。

    こういうサイトでは生活できないだろうし、あまり現実的でない終結だったが。


    1階前3列くらいまではジャニーズのファン層としては高めの女性客が団体で陣取り、これが井ノ原さんのファンの中心年代なのだろう。

    昔のグローブ座とは明らかに違う雰囲気での観劇だった。

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    2011/04/27 15:10

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