その族の名は『家族』 公演情報 こどもの城 青山円形劇場/ネルケプランニング「その族の名は『家族』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    池袋と青山、それぞれの家族
    ハイバイの「て」をほぼ踏襲した内容でしたが、
    役者達の味がしっかりとしみ出して、
    東京芸術劇場とは肌合いの異なるこの家族の質感があって。

    それはそれで、時間を忘れて、
    青山円形の家族の刹那にとりこまれることができました。

    ネタバレBOX

    この作品のハイバイバージョンは
    東京芸術劇場での再演にすっかりはまって、
    めり込むように公演の2度観までしています。
    それは鳥の糞を目印に重ね合わされる物語の表裏に
    単なるネタバレ的な時間の繰り返しにとどまらない
    家族のぞくっとくるような関係性や
    伝わってくる個々の内なる想いの鮮やかさに圧倒された
    舞台でした。

    その時の「て」と観たものと今回での作品の構造は
    概ね変わるところはありませんでした。
    にもかかわらず、
    青山円形劇場の舞台からは
    ちゃんと円形劇場の家族の匂いがする。
    父と子の関係にしても
    夫婦間の想いにしても
    台詞が同じでも
    円形の舞台に立つ役者達の個性が
    東京芸術劇場の家族達とは違う雰囲気を醸し出していて。

    比較になってしまい恐縮なのですが
    どちらかというと、舞台上から、
    家族の過去から積み重なってきたものの色が減じられ
    わだかまりのテンションが薄められる一方で
    家族のナチュラルな質感が誇張を少なくして描かれ
    空間を満たした感じ。
    ハイバイバージョンで垣間見えた
    日々を暮らす空気のエッジが
    観る側に飲み込みやすいように丸くされて、
    その家族独特の歪みの鋭角さに心を捉われるのではなく
    一般的な家庭の普遍的なレベルでの関係性や不器用な愛情、
    さらにおかしさやその先にあるペーソスが
    観る側を柔らかく浸潤していくような作りになっていました

    それは、
    ユースケ・サンタマリアがマイクを持って部屋に乱入する
    事情が明かされた時の可笑しさや
    研ナオコが自らの死を演じる時の遊び心なども
    さりげなく舞台にとりこむ土壌ともなっていて。

    なんだろ、演劇としての歯ごたえを抑え
    食べやすくされているような感覚があったのは事実。
    でも、一度目の時間の流れに
    二度目の時間が裏地として縫い合わされていく構造から伝わってくる
    家族の想いの表裏や奥行きが鮮やかに浮かび上がってくることは
    池袋でも青山でも変わりはなくて。
    家族という集団がもつ普遍性を滴らせる
    戯曲の秀逸はなんら損なわれていない。

    舞台にしつらえられた街灯がとてもよい工夫で、
    したたかに空間が作られていきます。
    家の内と外、家族の建前と本音、時間の表裏、
    さらには芝居の範疇への入り方と出方・・。
    なにげなく観る舞台に
    様々な切り口が組み上げられ
    役者たちのお芝居がその中で
    個々の色合いをしたたかに醸し出していく。

    観終わって、この舞台本来の面白さに加えて
    ハイバイバージョンを観た時と
    同じ形で違う色合いの想いが注ぎ込まれていたことも興味深く、
    また、それを成し得る戯曲の強度のようなものにも
    改めて舌を巻いたことでした

    0

    2011/04/24 06:52

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大