満足度★★★★
めいいっぱい楽しませていただきました!
隆子の葛藤、乱歩の苦悩、夢かうつつか分からなくなる傀儡の世界に引き込まれ、
とても楽しい時間を過ごさせていただきました。
2時間15分という時間も全く気になりませんでした。
ネタバレBOX
隆子が自分のことは乱歩の眼中にないと思って苦しみ、時には憎みながらも
乱歩を愛し支えていこうとする心の葛藤が切なくも強く伝わってきました。
乱歩がどんな思いを持って探偵小説を書こうとしたか、そこでの理想と現実の
ギャップに苦しむところも。
押しつけがましくないけれど強い思いが込められた台詞と役者さんの魂の
こもった演技のたまものなのだと思います。
乱歩は相当わがままで隆子に甘えきりな感じですね。
それでも節々にわずかながら隆子へのいたわりの気持ちが見られるし、
本人にも他人にも隆子のことなどどうでもいいようなことを言っているのは
気持ちが荒れているときだけなんですよね。
なので心にもないことを言ってしまって弁解もできない不器用なところが
あったと自分の中では解釈しています。
ラスト手前で手紙が最初だけは本当だったと乱歩が言って、ラストに
最初の手紙が届いたころの白昼夢で隆がほほ笑むところで終わるこの
流れが本当に、いいなあと思いました。
ただ分かりにくいところもありました。隆が管理している下宿屋と町内会長
たちの会話が途中で流れが変わっていたはずなのですが、内容がよく
わからずにそのシーンが終わってしまいあれ?という感じがしました。
細かい矛盾もちょくちょくあったと思います。
それでも、それらの気になることろを補って余りあるほどの満足感たっぷりの作品でした。
息子さんの平井隆太郎さんが乱歩について語った本を読んで、素顔の乱歩に興味を持った矢先にこのお芝居のことを知ったのはある意味運命を感じます。
ちなみに乱歩の自伝によると、乱歩は独身主義者だったけれど隆子が危篤と聞いてすまないと思ったし、身に余る光栄だと思って独身主義をなげうつ決意をしたと書いてあります。
手紙の内容は偽りではなく、書いたのは愛していたからだとも。