満足度★★★★
誰しも持ってる、感情。
今回も、アニマル王子らしい舞台でした。
シャイクスピアのマクベスと、能の黒塚の融合。
実は、マクベスは話の筋だけ、黒塚は殆ど知らない状態で見に行ったのですが、それでも十分に話の内容が理解できました、とっても面白かったです。
アニマル王子の舞台を見るのは3回目でしたが、今までと違う会場だったからか、舞台との距離が近く、通路を使った演出も迫力がありました。
今回は京都でも公演するとの事ですので、頑張っていただきたいなー、と陰ながら応援させていただきます!!
※内容についての感想
最初に思った事は、「女の人って怖い…」でした。
歴史の影に女あり、なんて言うこともあるけれど。
この舞台の中には、多くの女性の思いや欲望、執念が表現されてるなと思いました。
勿論、欲望や執念などの負の感情だけではなくて、家族や好きな人に対する愛情も表現されてたと思います。
ネタバレBOX
国を、この世をの呪うかのような魔女の岩手の迫力に圧倒されました。
何度鳥肌が立った事か…!
そんな岩手の予言に惑わされ、自分の主君や親友をも手にかけ国をわが手にしようとする眞久部と、その背中を何度も押す妻。
眞久部が何度も悩み、その度に少しずつ病んでいってしまうような…鬼気迫る演技にも惹きこまれました。
眞久部夫人は、夫よりも野心に溢れていて、終始悪女のような印象でしたが、終盤、夫を心配したり、岩手の言葉で心が揺れてしまった後の悲痛な叫びなどを見ると、やっぱり女性としての弱さを併せ持つただの人でもあったんだな、と思いました。
父を殺され、兄とも離れ離れになり、どんどん悪意を膨らませていく藤笠姫も、最初の純粋無垢な『女の子』から、段々と『女』になっていった気がして、ここでも女性の恐ろしさを感じた気がします。
基本的には、シリアスで負の感情が渦巻く話の中で、一瞬吹き込む風のような羽鳥と神無の掛け合い。
不遇な環境の中で、肩を寄せ合い日々を生きるために努力し、更には周りの人をも幸せにしようとする二人に、心が和む事も多かったです。
でも、そんな二人も岩手の言葉によって、とっても残酷な形で引き裂かれてしまったシーンには、グッと胸が詰まりました。
最後の羽鳥と神無の会話は私的には、一番感動しました。
ずっと、神無の中に羽鳥はいるんだなぁ、と。
この世と、あの世で離れてしまっても、二人は一つなんだなぁ、兄妹って良いなぁ、と思いました。
眞久部は、とても心が弱く、自分の欲望に勝てなかったけど、それは誰にでもある事なんだと思います。
そういう意味では、とても人間らしいと思う。
そして、凄く可哀相な人だと思う。
親友ですら殺してしまうほど、周りが見えなくなってしまったのだから。
町の人を見てて思ったのは、「数の暴力って恐ろしい」という事。
多数がYESと言えば、YESに、NOといえばNOに。
そんな風に大きな流れを作ってしまうことは、とっても危険で怖いことだと思う。
流れが激しければ激しいほど、逆らうのは大変で、逆らう気持ちが飲み込まれてしまうから。
このお話に出てくる人は、立場や環境が現在ではないだけで、誰にでもある感情や、誰にでも起こりうる出来事に翻弄された人々なんだと思う。
悲しい最期を迎えた人も少なくないけれど、それでも一筋の希望が見える気がしました。
神無が最後まで信じた、だいだい色の空。
きっと、とっても素敵な風景なんだろうな。
1度しか見れなかったのが残念でした。