満足度★★★★★
三人姉妹
素晴らしい公演だと思いました。100年前、チェーホフが表現したかったであろう苦悩を、時間と場所を越えて共感できる舞台でした。役者のみなさんの力量、台本のよさ、洗練された舞台と全てにおいてレベルが高く、初めてロシア文学の公演を見るという方にもお勧めできます。
小さな劇場で、座席数が限られている中、この公演を見ることができたのは幸運だったと思います。
ネタバレBOX
生きる事への辛さが三人姉妹や軍人らを通してダイレクトに伝わってきました。私自身東京出身で一時地方に身を置き、また東京に戻ってきた経験があり、いたいほど彼女の思いがわかりました。
ロシア文学なのに分かりやすい文体と思います。ロシア文学に挫折した経験のある私でも違和感なく見ることができました。
芝居の内容もさることながら、舞台美術も素晴らしいと思います。チェーホフの時代を想起させるディテールと白と黒のコントラストを強調した現代的表現が統合されており、完成度の高い舞台であると感じました。
なにかと感情的な表現でマスメディアは溢れかえっており、目先の生活は逼迫した観があります。現代こそ、少佐のように200年先の幸せを夢想する事が必要と考えます。より多くの人に楽しんでいただきたい芝居であると思います。
満足度★★★★
目から鱗が落ちました
「忠臣蔵」というある意味日本人のメンタリティーの根幹を成す演目を題材に180度視点を転換した快作と思います。面白かった。
詳細はネタバレを確認願います。
ネタバレBOX
吉良上野助=悪の図式をくつがえした、さわやかな吉良役はなかなか痛快でした。難しいテーマだけに役者さんの演技力(特にメインの役の方)が光っておりました。このオリジナルな視点は結構貴重だと思います。江戸町民の噂好きを現代のマスコミと市民の論調になぞらえて皮肉るところなど(私の解釈が正しければ)お見事でした。
善と悪は必ず必要な概念なのか、今の日本人、物を見る目が一方的になっていないか・・・・ある意味哲学的な一石を投じるストーリーであったと思います。
一方音楽とダンスが・・・質自体はいいのですが、この貴重なストーリーに没頭する余裕を与えてくれなくて、少々煩雑な印象です。(元気さがこの劇団の特徴なのだとは思いますが・・・・)
今回、勧善懲悪的な忠臣蔵を期待して見に来た方にはケチョンケチョンの評価をもらったかもしれませんね。これに懲りず、次回も面白いものを。期待しております。