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イヌ物語

イヌ物語

劇団サーカス劇場

シアター711(東京都)

2009/06/24 (水) ~ 2009/07/05 (日)公演終了

満足度★★

素朴
脚本家なりにはちょっとひねってるつもりなのかもしれないけれど、私にとっては脚本がちょっと素朴すぎました。「こうすればおもしろく謎がかって見えるだろう」みたいな脚本家ののりがすけてみえ、「これがわからないひとには正直見てもらわなくていい」という感じの思考が背景をなしているように思います。そのわりに物語は設定に頼りきってしまって、その設定を描ききるリアリティはないように感じます。いろいろ特異なプロフィールをもった人物が舞台には登場します。逆に言えば、特異なプロフィールを持った人しか登場しません。そのためだと思うのですが、登場人物は脚本家が課した肩書きにひきずられることでしかせりふが成立していません。せりふじしん、だいたいいろいろな作品を見ていればでてくるものの組み合わせです。オリジナルで脚本を書くならば、旧来のものに不満を感じ、先鋭的であってほしかったように感じます。何人かキャストはいいなと思っただけに、残念です。

ネタバレBOX

登場人物たちはみずからの悩みをそのせりふを通して表現し切れていないように感じました。たとえば、ひきこもっていた人が急に外に出てきて思いを語るときに、あれだけすらすらみずからのできごとを話せますか?ひきこもるのは社会ではたらいている自分が正当に評価されないと感じ、みなから言われなき後ろ指を差されているように感じているからだけですか?「いぬ」呼ばわりされていた人は、雨で外に捨てられていたときの、またそれを逃れるために今度は「家畜」として飼われたことの、惨めで悔しい思いを感じていますか?「ロックのおじさん」がいまだにあの年齢で「ロック」に生きることの大変さ、ギャップと違和感、報われないことに対する悩みなどを感じながら若者と関わっていましたか?結婚相手も恋人もいず、音楽と真剣に関わっているわけでもないですよね?人の生とか死ってそんな単純にわりきれないように感じます。その意味で、この脚本は行為の重さと行為の結果がつりあってないように感じられました。というか、脚本家がそこにつりあいがとれていないことに対して、おそらく無自覚であったことが、ここで「素朴」と表現することの内実です。

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