堀 光太郎の観てきた!クチコミ一覧

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無頼茫々

無頼茫々

風琴工房

ザ・スズナリ(東京都)

2009/05/10 (日) ~ 2009/05/18 (月)公演終了

満足度★★★★

う~ん…これは一見の価値あり!
プレビュー(D列ほぼ中央)。詩森作品&風琴工房初見にして、心をわしづかみにされてしまった…!骨太の人間ドラマが見たい人には、一見の価値あり。中でも、大正時代モノや、宮本研の『ブルーストッキングの女たち』を好きな人には、特にオススメ。

タイトルやチラシの宣伝文などから<男芝居>かと思いきや、登場する個々の女性たちも十分魅力的な<群像劇>といったほうが良さそう。すべての役者の持ち味を生かすべく、愛情に溢れたつくりに好感。

「表現の自由」「権力との関わり方」といった硬派なテーマを中心に据えつつ、それぞれのロマン(といってよければ)をもってたくましく(時にふてぶてしく?)生きようとする様々な人間像を描く意欲作、と見た。――といって、うわべだけを見て、「よくある官憲vs表現者モノ」「いわゆる大正ロマンもの」と考えたら大間違いだ。独自の視点で語られる物語には、現代に生きる僕ら表現者たちに向けた、痛切な問いかけが含まれている。

――もしかしたらこの作品は、今後は他の劇団でも上演されるような本格社会派劇となっていくかも…?

 一般の演劇ファンはもとより、魅力的な本を求める制作者、演出者、劇団関係者にも、まずはぜひ、一度ご覧いただくことをお薦めしたい。(5/18まで)

ネタバレBOX

●「言論の自由を管理・弾圧しようとする官憲と、そこに抗う気骨ある表現者たち」という図式や、「歴史は強者による強者の(ための)記録」というだけならありきたりだ。しかし、この詩森作品の秀逸さは、「だからこそ《空白の記録》の意味がある」という独自の視点を持ち込み、そこに挑む弱者=表現者の姿を描こうとした点にある。

●また一方、登場人物のうち今日の我々が最も共感するのは、主役の新人記者・堂海とは限らない。体裁を重んじ、生活を重視した生き方に拘泥してしまう記者・権堂や、権力側に内通しつつ、信念もなく迷いを捨てきれない記者・角本――そんな、僕らの周辺にごろごろいそうなヘタレな人間たちを、詩森は愛情を持って他の登場人物たちと変わらず丁寧に描き出し、現代の僕らの生き方に問いかけを発する。

ここにこそ、《今日の僕ら自身のための演劇表現》としての大きな価値があると感じた。

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