実演鑑賞
満足度★
無料招待券があれば鑑賞するかもしれない。知り合い・昔からの馴染客以外にはエンターティメント性が極めて乏しく、大変厳しい演劇だったと言わざるを得ないものでした。
役者・演出家が頑張っていればいい、というのであれば、手術が下手な合併症だらけの「がんばっている」外科医も非難せず拍手を送らなければならないだろう。
とっても残念です。寺山修司を見たくて行きましたが、、、。印象批評はするつもりはありませんので、ネタバレに以下記載させていただきます。
ネタバレBOX
出だしでヴァイオリンを引く女性が現れる。本物のバイオリンを持ちながら、弾くかと思いきや音響でカバー。弾いているフリ(このフリも酷いものでした)。観客に一瞬期待をもたせる、のが演出の目的であれば成功したかもしれませんが、笑いは一切起きませんでした。緊張と緩和を目的とした演出であれば、失敗でした。変な期待を持たせないのであればおもちゃのバイオリンを持たせても良いのにと思いました。なぜなら、この演出だけで『もう見たくない演出』かもしれないという胸騒ぎを感じたからです。それは、当たっていました。
平均年齢が69歳の方ががんばっている。それは素晴らしいことだと思います。ただ、それにお金を取る行為はいかがなものでしょうか。ラインダンスも揃っていませんし、コロス的な歌うたいも酷いものでした。がんばっているから、という応援として観るべきなのであれば、もう何も言いません。お金は返してほしいという思いを、演劇で初めて感じました。
寺山修司が好きで、彼の言葉だけでもと思い最後まで観劇しました。言葉自体は素晴らしいものでしたが、演出への共感的羞恥が強く、何度も鳥肌が立ってしまいました。
最後の舞台挨拶で、演出家はがんばっていた役者については一言も触れず、自分の本を延々と紹介し続けるところに、この劇団の行く末が容易に想像できました。もし「シニアでも驚くような演劇を」というものを作ろうとしているのならば、最後の舞台挨拶では彼らが主役として褒める時間をなぜ設けなかったのでしょうか。自分の書いた本をそんなに紹介したかったのでしょうか。とっても残念でした。
プロジェクトマッピングの演出は良かったと思います。時間の流れや舞台などを効果的に視覚で演出しており、場面展開が理解しやすいものとなっていました。
ただ音響の入りがかなり唐突な部分があり、観客の驚きを意図しているのなら成功していますが、不快でした。
寺山修司の演劇に対する印象を根底から悪い意味で覆したこの演劇を、早く忘れたいです。