松澤くれはの観てきた!クチコミ一覧

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【終演しました!】ピンポンしょうじょ→

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劇団ダブルデック

OFF OFFシアター(東京都)

2014/08/21 (木) ~ 2014/08/24 (日)公演終了

満足度★★★★★

観るだけで楽しい演劇の愉悦。
若手劇団が跳躍する刹那をみた。

ソリッドな演劇の楽しさ。快作。

ネタバレBOX

物語自体は王道の人生讃歌。

狭い舞台空間にて次々と展開する高密度なシーンの数々。
明瞭な一本軸に支えられているので、純粋にとても観易い。

いま目の前で起こっている物語を追うだけ、それが、ただただ楽しい。観るだけで楽しいのが演劇。この単純さに打ちのめされた。

そして特筆すべきは、独自の熱量表現。
ともすれば絶叫一辺倒のむさ苦しい芝居に陥りがちな「熱い演劇」へのアプローチを、周到な知恵をもって試みている。

何気ない一対一の対話が高テンションを維持し得る秘訣は、その周囲を取り囲む役者達に課せられた「規律」にある。
統率のとれた不自然な動き。それらが舞台上にリズムと熱量を産み出し、その時フィーチャーされるべき人物を最大限にサポートしてゆく。これは役者が演出家を信用し、かつ役者同士の信頼がなければ、成立し得ないであろう。
この繰り返される相互扶助的バトンタッチが、オーソドックスなテクノビートBGMとのシナジーにより、「リズム熱量」とでも形容すべき独特の演出を帯びてゆく。

ひとたび「リズム熱量」の心地良さに抱かれてしまえば、言葉や場面を変えて行われるルーティンが、ひどく爽快に感じられることだろう。

恐らくは「柿食う客」と「ままごと」の多大な影響下からスタートしたのではないかと思える当該劇団の演出技法が、今公演をもって格段の飛躍を遂げ、独自のスタイルを体得・修練するために走り始めた。

以上に述べた通り、当該公演は大変に快作であった。
しかしながら、けして傑作とは呼べない所以もある。

第一に、役者の力量が追いついていない。
各キャラクターの方向性が明確なのだから、ただ真っ直ぐ突っ切るべきところを、どうにも足踏みをした役作りになっている。いくらでも、それこそ俗なことを言えばキャラクターごとにファンがつくような「おいしさ」が、台本上には無数にあったはずだ。それらの取りこぼしと研磨の怠慢は、惜しいと言うにはあまりに悔しい、手落ちではなかろうか。

第二に、中盤のネタコーナーである。これは致命的なまでの失策に思えた。段取りの如き緊張感の欠ける雰囲気のなかで面白くないネタをやるのも損だし、何よりこれは、劇団最大の武器「リズム熱量」を真っ向から否定するものであり、タブー中のタブーではないのだろうか。当該シーンは、演出全体に対する猜疑心すら芽生えさせる危険を孕んでいよう。

他にも、要所に目立った粗や、稽古不足も否めない上、集中力の切れる瞬間も幾度か見受けられた。完成度の高い作品かと問われれば、首を縦に振りづらい。
だがしかし。それらを差し引いても、この演劇には圧倒的な価値があった。

前述の通り、若手劇団が偉大な先人の模倣から脱却し、新たなフロンティアに旅立ったという事実。型を守り、初めて破り、やがては離れる。守破離の大いなる可能性を目の当たりにした。

加えて、当該公演の成功、ひいては「面白さ」が非常に危うい土台で揺れていたこと。
誤解を恐れずに言えば、ともすれば次回公演はひどくつまらない公演になってしまうのではないかと、余計な危惧をおぼえた。不安定な要素が神の采配によって何重にも絡み合うことで、この面白さが顕現したのでないか。このように、余計なお世話を臆面もなく吐く恥知らずな観客を、是非とも叩きのめす快進撃を期待する。

その意味で、次回公演こそは絶対に見逃せない。
飛躍を経験した劇団の屋台骨が、他の追随を許さぬほどに化け物として暴れてゆくさまを、追ってみたいものである。

何はともあれ、大変に素晴らしい演劇体験を劇場にて味わうことが出来た当事者の一人になれたことが、無常の幸福と胸をはれる。

だからこそ。
すべては以下の言葉に収斂できよう。

「観に行って良かった」

素敵な時間をありがとう。心からの敬意を。

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