丘田ミイ子の観てきた!クチコミ一覧

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ノーマンズランド

ノーマンズランド

Oxymoron Thatre Club

北とぴあ カナリアホール(東京都)

2025/07/23 (水) ~ 2025/07/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

OTC第一回公演『ノーマンズランド』、朝比奈竜生さんの新訳で。

一貫性のなさに一貫性を、無意識を意識的に。その名の通りオクシモロン(撞着的)な試みを実践するシアタークラブでした。
劇場選定もさることながら中村友美さんによる細部まで繊細な美術、饒舌な陰影を灯す岩城保さんの照明にもうっとり男たちがとりとめなく話すのは酒と女と戦争、そして、忠誠と所有。酒というより人生や時代に酩酊する男らが垣間見せる、男性性の悲哀。難解な戯曲ながらも、"誰もいない国"に居座る男たちを秋場清之、クロス・フラット、椙田航平、丹野武蔵の4名の俳優が競演。狂気と正気の往来を其々堪能した。
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ネタバレBOX

島村さんの(相変わらず)冴え渡ったキャスティングと配役、それを想像以上の存在感で体現する俳優の表現力よ!また、兵藤公美さん、堀脇千佳子さんによるオープニングパフォーマンス(人形劇)があるのとないのではだいぶ印象が変わると思う。短いながらもキッチュでシニカルな素晴らしい導入だし、情熱のフラミンゴで培われた劇世界を随所に感じる瞬間でもあった。そして俳優秋場清之、ここに極まれり!である。類を見ぬ目の座り方、身体の解放と促進、そして抑制。最初に会った時、ラップをするその姿を見た日から誰にも似てない人だと思っていたけど益々の躍進。同じ俳優を長年見る喜びを感じた。
それは、満月の夜のことでした

それは、満月の夜のことでした

WAKABACHO WHARF 若葉町ウォーフ(神奈川県)

2025/07/29 (火) ~ 2025/07/30 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

途の階『それは、満月の夜のことでした』
「ある」とも「ない」とも言い切りたくない。そんな狭間や隙間を行ったり来たりする時もその心の泡立ちを炭酸と一緒に飲み込む時も独りを照らす月はそこにある。月は照明でありキャストだった。(水曜日のネコのプルタブが引かれるまでの、ある)満月の夜のこと。

テン9

テン9

ペキニーズ・ドットコム

OFF・OFFシアター(東京都)

2025/07/15 (火) ~ 2025/07/20 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

独りで走れなければ誰かとは走れない。
だけど、一人じゃないから出せる速度見れる景色もある。暴走族の話です。
と見せかけて演劇の話だしさしずめ世界の話だったと思います。ラスト5分痺れた。女が可哀想じゃない、かっこいい演劇好きだ。
実は選挙投票日にぴったりかも。

始まりの終わり

始まりの終わり

ムニ

アトリエ春風舎(東京都)

2025/07/20 (日) ~ 2025/07/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

とんでもないことに挑戦していると聞き少し緊張しながら向かったけど、"始まり"から"終わり"まで面白かった。
忽ち舞台上の5人に取り込まれ、自分がその内の誰かである様にも、残る1人である様にも感じられ、人間ひとりの不在と存在の曖昧さを自分の心身を通じて体験した。理解しようと思って作品や人物を追うことによって見えてくるものもあるけれど、溢れ落ちるものもある。
それは、他者を分かろうとする、分かるものであるとする行為がかえって他者の存在(やあるいは不在)を限定してしまうことにも通じている気がする。目の前の風景に身を任せることでそんな実感に辿り着ける様な劇体験だった。
そして、自分の中に潜在的にある他者を分かりたい、関係したいという切実と傲慢のいずれもに向き合わずにはいられない時間だった。

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ネタバレBOX

着ぐるみを着て生きている自分とそうではない自分がいて、できれば後者のまま他者とともにありたいし、他者にもそうあってほしい。だけどそうもいられない。グミは私自身であり、他者そのものでもあった。

そこにいなかった第三者として話を聞いただけなのに、時間が経って自分もその出来事の中に存在していたかのような錯覚を起こしたり、会いもしていない他者の存在が自分の中で膨らんだり、自他の境界がぼやけたり揺らいだりする瞬間は日常にもある。
そんな風にいつか、例えばおばあちゃんになった時なんかに、修学旅行に行けなかった友達とニセ修学旅行に行ったことのある気がしてしまうかもしれない。居酒屋の喧騒やラーメンの後の胃もたれ、W杯の明け透けな盛り上がりなんかを一緒に思い出したりするかもしれない。帰りにどうしてもラーメンが食べたくなって食べたから余計に。他者の中に参加したい、存在したいという欲求を背脂とともにかっこみながらそんなことを思った。もちろん一人前を完食した。やっぱりとんでもないことに挑んでいた。5名の俳優が上演中それを感じさせないことこそがやはりとんでもなかった。まずは上演のみから受け取りたいという思いからいつもは当パンも最後に読むけど、珍しく開演前に。「話を追わなくても、なんだこりゃって思っても大丈夫」という旨が書いてあったので身を任せてたらかえって言葉や風景が入ってきた。わかろうとせずに観るのおすすめかも。
阿佐ヶ谷に死す

阿佐ヶ谷に死す

劇団ドラハ

シアターシャイン(東京都)

2025/07/18 (金) ~ 2025/07/21 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

生から死、物語から演劇、俳優から登場人物、上演からアフタートーク、でなく、その全てが逆説的かつ不可分に"波"として押し寄せる。「演劇」という所業の、営みの混沌に巻き込まれながら生きる人の瞳に閃光を見た。私も意味に追いつかれない様ぶっ生き返して生きてたい

グロリアストラベル

グロリアストラベル

桃尻犬

浅草九劇(東京都)

2025/07/16 (水) ~ 2025/07/20 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

今の自分がどうしても出会わねばならなかった。演劇とは不思議なものでそんな奇跡的な邂逅が稀に起こります。私にとってはこの作品がそうでした。夫婦と家族の行き止まりで揺らいでいた情緒がぼっこぼこにやられた。演劇だからこそ叶えられる風景、哀しく美しいラスト。

海と日傘

海と日傘

R Plays Company

すみだパークシアター倉(東京都)

2025/07/09 (水) ~ 2025/07/21 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

海の外側から波を見つめる様にも、傘の内側から雨を見つめる様にも感じた空間に雨上りの日が差す時、虹の中で終わりのない問いが揺れていた。
ないものをあるように見せる演劇が、あったものをないように見せている今を突きつける。
戦後80年「うちのこと忘れてはいけんとよ」という言葉に私たちは何を思うのか。日々の裂け目から生と死が、砂浜に描いた文字が波に拐われていく様に手の中へと落ちていく。海へと溶けてく前のその瞬間に耳を澄ませ、目を凝らす時間だった。死へと向かう妻が静かな終末のその中で静かに、しかし確かに見せた抵抗が忘れられない。

本作では(過去に観た松田作品と照らし合わせた時に)「あれ?」とある種の違和感を覚える演出が幾つかあるのですが、それらがやがて劇の輪郭を縁取り、新たな気づきに導かれる感触があった。身体の先端が立てる音、側面からの眼差しの雄弁さもその一つ。

ダンスマラソンエクスプレス(横浜⇔花巻)

ダンスマラソンエクスプレス(横浜⇔花巻)

KAAT神奈川芸術劇場

KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)

2025/07/11 (金) ~ 2025/07/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

取材後に駆込み、諦めなくてよかった!ダンスであることは間違いなく、しかしもはやマラソンで、思いもよらぬ遠くへと連れ出された点においては完全にエクスプレス。桟敷席に素足のエネルギーがドクドクと。鼓動の響き、光の速さ、そして静寂の時。よかった。

校舎、ナイトクルージング

校舎、ナイトクルージング

ロロ

武蔵野芸能劇場 小劇場(東京都)

2025/07/08 (火) ~ 2025/07/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

ロロいつ高『校舎、ナイトクルージング』、胸がいっぱい。誰かの声に心を撫でられたり、誰かの眼差しに存在を照らされること。果てしのない世界で誰かが誰かを見つめる/見つけるという眩しさが夜の校舎に、昼休みの喧騒に満ちていた。見えないもの、聞こえないことだって存在する。確かに存在してる。

音楽演劇Lite「あれ、なんかディレイする涙」

音楽演劇Lite「あれ、なんかディレイする涙」

エリア51

水性(東京都)

2025/07/03 (木) ~ 2025/07/08 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

エリア51音楽演劇Lite『あれ、なんかディレイする涙』。私は自分の本当の感情に気づくのが遅く、時間が経ってからふと"あの時の気持ち"に気付く事がある。そしてそれは音楽や演劇に触れている時だったりもする。その瞬間、遅れてでも"あの時の涙"をちゃんと流せてよかったと思う。改めてそう思った。

廃グランド・ホテル別館

廃グランド・ホテル別館

システム個人

小劇場 楽園(東京都)

2025/06/25 (水) ~ 2025/06/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

チラシ、タイトル、そしてキャストを見た時から絶対観ようと思っていたシステム個人『廃グランド・ホテル別館』。こういう直感がバチーンっとハマる喜びもまた観劇の醍醐味。大好きな世界観でした。
怪異たちの暮らすホテルが舞台のコメディだけど全然それだけじゃなかった。自分とは何もかもが異なる他者、そんな誰かのことを好きになったり、恋しく思うこと。会いたいと思うことや、会えなくなりたくないと思うこと。この演劇はその瞬間を掬い上げ続けていたように私には見えた。だって今の私がもうそうなっている。あのホテルに暮らしていたみんなのこと好きになって、会いたくなって、恋しくなってる。そういう気持ちって、記憶ってなかなか消えない。25年くらい平気で消えないのかも。なんてことを思った。

私がもし幽霊になったら、なかなか成仏できない気がする。
好きな人に会いたいって気持ちがそうさせてしまう気がする。
そんなことも思った。友愛とか恋愛とか家族愛とかどれも違う気がするしでも全部当てはまる気もする。そんな名前のつけられない愛着や関係をそのまま抱きしめてくれるような作品でした。

可笑しく愛らしいキャラクターが出てくるコメディが観たい人はもちろん、お話としてうねりのあるドラマが観たい人も楽しめるのでは?と思いました。
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ネタバレBOX

アルバムを眺める八重子さんの慈悲深い眼差しと声色が忘れられないし、吸血鬼と狸のやりとりに泣いちゃったのはさすがに想定外!やられた!いずれも哀切の滲む美しいシーンだった。あと、ヒデキはあのビジュとパフォーマンスできっと平成令和の歌謡界でもバズれるし、豆腐小僧と凸凹デュオという道もあるのでは!とにもかくにも俳優がひとり残らず魅力的(だし技術もすごい)で、配役もぴったり、というか、ぴったりに魅せていることが本当に素晴らしくて、素敵なことなのだと思った。

あと、実はめっちゃ伏線ある。
観終わった時にもう一回最初から確かめたいと思うようなドラマ構成&展開...!
音楽がまためちゃくちゃいいなあと思ったら、やみ・あがりシアター『あるアルル』と同じく小山優梨さんだった。
小山さんの作る楽曲は劇中の風景が走馬灯のごとく駆け巡る音楽で、演劇の中にただ音楽があるのではなく、音楽の中でも演劇が上演されているのだ、としみじみ感じるのです。
センスセンスセンス・オブ・ワンダー

センスセンスセンス・オブ・ワンダー

三月倶楽部

OFF・OFFシアター(東京都)

2025/06/20 (金) ~ 2025/06/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

窓のない、しかしそれそのものが窓である劇場でこの旅に立ち会えたことが嬉しかった。若くなくても、子どもを育てていても、私たちは遠くに行ける。冒険ができる。私もそう信じています。

(上演前に公式HPに稽古場日記をお寄せしました。後ほど劇評もお寄せします)

リトルサマー

リトルサマー

リトルビット

浅草九劇(東京都)

2025/06/25 (水) ~ 2025/06/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ありがちなAI対人間の構造に収めず、かと言って容易にその共存やAI礼賛にもしておらず、絶妙にありそうでなかった話だった。

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ネタバレBOX

それでいて痛烈なのがAIの効果音が人間の呼吸と声でアテレコされる点。あれはもう発明。テクノロジーの最先端に挑むボイパ格好よすぎるし、最後はもはや文字通り花火師技...。あそこで無闇に映像やカラフル照明使わないのも演劇に託した、ひいては人間を信じた演出に感じて示唆的で結構グッときちゃったな。私は音がする方に耳をすませるし、光れば目で追いかけるし、夏はあなたと落ち合って一緒に花火を見たいんだけど、ねえChatGPTはどう思う?
みどりの栞、挟んでおく

みどりの栞、挟んでおく

宝宝(bǎo・bǎo)

水性(東京都)

2025/06/18 (水) ~ 2025/06/22 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

子どもが寝たらやろうと思ってたこと、話そうと思っていたこと、聞こうと思っていたこと...そうしてそれらをできないまま時が過ぎてしまうこと。

子育てってまさに、流れてく時間に栞を挟んでそのまま忘れちゃうことの連続だから、「挟んでおく」って言ってくれる人、そのことを一緒に思い出してくれる人に救われてばかりの12年だったってことに改めて気づいた。
気づかされる演劇だった。それと同時にその人が私にそうしてくれたことを私はその人にしていただろうか、ということも考えさせられる演劇だった。

圧倒的にちがうあなたとわたしが「互いにできるだけ傷つかずに一緒にいるためにしているはずのこと」が、少しずつあなたからわたしを、わたしからあなたを遠ざけてしまう。挟んでいたはずの栞はパラパラと落ちて、何を読んでいたのか、どこを読めばいいのかわからなくなる。
でもこの作品は、「もう一回一緒に読めばいい」を信じようとしていた。他者と生きることを自分なりのやり方で諦めない、不器用で懸命な人々の姿がそこにあった。

「出産や育児によって"失われる自分"がある」ということ、そして「子どもから離れてひとりになりたい」ということをはっきり言ってくれたことにも私は本当に救われた。12年ずっとこのことばかり考えている。
「子育てに没頭できず自分を優先してしまう罪悪感」と「子どもを産んだだけで私は私でしかないという祈り」の挟み撃ちで引き裂かれそうになる時「それでもやっぱり子どもが大事」という結末や感触をしばしば物語やドラマは用意したがる。最低のままでいさせてもらえない不自由と、最低じゃないよと誰かに言ってほしい切実の狭間で何度途方に暮れただろう。
だから、そのどちらでもない、そしてどちらにもとれる「いいじゃん」を聞いた時涙が止まらなかった。
「いいじゃん」も栞だった。私が私を適当に読み終わらないための栞だった。
そして、どこからでも「あなたのことが大好き」ってことから始めるための栞だった。

余談。かなた書店の選書と私の本棚の本の並びがあまりに似ていて他人には思えなかった!遠目でざっと数えただけで20は同じ本があった(笑)そして私はそのことがすごく嬉しかった。私も必ずあの本屋に行くだろう。きっとあの場にいるだろう。そう思える時間と空間、それから人々だった。
あともうひとつ。これは何度でも言わせて下さい。
「セルフ託児ありがと割」をありがとう。ずっと欲しかった言葉でした。そのことに気づかせてくれました。誰かの生活や支度を見つめる試みはやっぱりこの演劇そのものの魅力に通じていました。

サウナが身体に良いわけねぇだろうが(仮)

サウナが身体に良いわけねぇだろうが(仮)

劇団ドラマティックゆうや

恵比寿・エコー劇場(東京都)

2025/06/12 (木) ~ 2025/06/15 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

劇団ドラマティックゆうや『サウナが身体にいいわけねえだろうが』(仮)改め『嘘の教育』。

「言ってくれた嘘」と「言わない本当」果たしてどちらが価値がある?
そんな世界の、人間のバカデカ命題に今日も今日とて男が二人きりで食らいつき、同時に食らわされ、皮肉のジャブと愛のハグを繰り返すサウナより熱い100分。今回の主題歌も最高だった。劇団の持ち味である、そんな愛と皮肉の絶妙配合によって、"教育における嘘"が暴かれる?なんて思っていたら、いい意味で裏切られた。

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ネタバレBOX

社会との接点を失った息子の再起を願って、母が"処世術"として嘘を教育する。その嘘こそが演劇である、という入れ子構造含めて鮮やかな構成だった。演劇における「嘘」を舞台上で多分に活用しながら、しかしそれらと私たちの日常におけるあらゆる演技=嘘は一体何が違うのか、という提題をさらっと突き付けてくる。

"この世は舞台、人はみな役者"なんてシェイクスピアの名言をナラティブに挟み込みながらコミカルかつ真摯に。ドラマティックに。短編でありながらシームレスに接続する主題、多数の役に忍ばされる世界の解像度の高さも今作でまた一つ確かな強度を築いていた。

毎度ながら感嘆してしまうのは、喫緊の社会問題を盛り込みつつも、皮肉や批判に振り切りそうになったギリギリのところで愛や誠実がわずかに多い分量でまぶされる点。
例えば陰謀論を語る老人を描く時に「悪いのは社会だ」という一言が即座に発されるとか、「9000万の示談金」という言葉だけには首を縦には振らないだとか、誰かを闇雲に悪者や笑い者にしたり、誰かの傷口を軽く扱うことがない点においてドラマティックゆうやの演劇は鋭利であっても安心して観れる。広告というマスの世界で日々大衆に向けながら個人の心に刺さる表現と対峙しているドラマたけし(泉田岳)ならではのまなざし。その示したいスタイルをキャリアに裏打ちされた演技力で鮮やかに立ち上がらせてみせるドラマゆうや(田中佑弥)の胆力。
そんな二人が高校の同級生で、今もなお一年に一度、互いの仕事や生活の傍らともに演劇をやってるなんて、そんなのもうドラマティッカー以外何者でもないだろう。

「金木犀は日本では自生しない。つまりそこには必ず金木犀が好きだった人がいるってこと。世界にたった一人だけ自分を愛してくれる人がいたら、人は歴史に名を残せる」こんなグッとくるセリフが笑いと笑いの狭間から煌々と輝くのだから、やはりこの演劇はドラマティック以外何物でもないと思う。

「言ってくれた嘘」と「言わない本当」、この世界では果たしてどちらが価値がある?
どちらの経験も同じだけ重ねてきた気がして、その選択はやはり難しい。
だけど、「言ってくれた嘘」の中に少しでも本当があるかも、と信じてるから、信じたいから、私は演劇を観る今日を、人と出会う人生を選んでるのかもしれない。そしてその実感を綴る時には「言った本当」を無添加の言葉に託したいと思う。だから書く。
劇団ドラマティックゆうや『嘘の教育』は本当の演劇だった。

ちはみに後説によると「劇団ドラマティックゆうやのお客さんは大半が広告関係者」(それはそれで珍しい!)らしく、(その因果関係は定かでないが)「感想が全然あがらない」らしい。ちなみに現在の私の仕事はざっと広告1割、演劇9割...つまり1割だけ広告関係者とも言えるけどいつもの如くバリバリ感想書きました!
プレイ・モデュロール

プレイ・モデュロール

ハラサオリ

シアタートラム(東京都)

2025/06/13 (金) ~ 2025/06/15 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

テクノロジーの進化が与えた影響をリアルな身体を通じて受講する高密度なレクチャーパフォーマンス。
「携帯の電源お切り下さい」から即没入、幅と高さそして奥行きのある"振付"に高揚!
バレエとダンスを習う11歳の娘と、ハラサオリさんならではのユーモアとエッジの効いた構成とパフォーマンスを堪能しました。すごくいい時間だった。生まれて初めて「北海道」と叫んだ日!

燃える花嫁

燃える花嫁

名取事務所

吉祥寺シアター(東京都)

2025/06/11 (水) ~ 2025/06/15 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

"架空の日本"を舞台に描かれる、外見ではその"しゅつし"がわからない移民の生きる今、背負う過去、そして見えぬ未来...。あまりに自然に溶け込む「ザ行が濁らぬ関西弁」が現実の隣人の存在に、人生に、そしてそれらを透明化してしまうことに輪郭を持たせていく。ラストに立ち上がるタイトルの風景に震えるとともに、「花嫁」という言葉が意味する本当のところを考えさせられたりも。

「シスターフッド」と一口に呼ぶには憚られる複雑な憧れと思慕と共鳴...誤解を恐れず言うならば、私はそこに同性愛/同性婚を巡る問題をも見た気がしたのだった。男女二元論を前提とした結婚あるいは求婚や、女性同士という理由だけで連帯を余儀なくされる昨今のシスターフッドの汎用化に異を忍ばせる意味も含んでの「花嫁」だとしたならば...。そう考えたとき、現実に隣人を透明化してしまう実感がよりリアリティを持って身に迫ってくる。
移民問題を見つめると同時に、"移民"というラベルのみに個人を収めてしまう社会や世界の横暴をも見つめた作品だったのではないか。振り返れば振り返る程そんな気持ちになって仕方ない。
いずれにしても今を生きる私にとって、同じく今を生きる隣人の息づかいを切々と伝える作品、俳優陣の見事な緩急あってこそ辿り着けた実感だった。

ENCOUNTERS with TOO MICHI

ENCOUNTERS with TOO MICHI

THE ROB CARLTON

赤坂RED/THEATER(東京都)

2025/06/11 (水) ~ 2025/06/15 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

もう本当に「一体なにをみせられてるんだ」と笑いながら、「もっともっとみせてくれ」と思った80分のチャーミングな爆笑遭遇劇でした。
"未知すぎるもの"について議論を重ねると、その"未知すぎ"を凌駕する、"さらなる未知すぎ"が爆誕するのだと知りました。馬鹿馬鹿しいのに、俳優陣の突き抜けた姿がかっこよく、上質なコメディでした。

『bitter』

『bitter』

Ollegent

スタジオ空洞(東京都)

2025/06/05 (木) ~ 2025/06/15 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

一部衣裳をお貸出し(李そじんさん着用分)しました。
色々考えて選んで下さっただけあり、衣裳が劇の内側としっかり手を繋ぎあってて装いの意義を改めて実感。
彼女は自暴自棄と後ろめたさの狭間で過剰に装飾が施された服で武装し、麻痺させる様に乱世を生きていたのだな、と思うなどしました。コーヒーの苦さを消し去るために大量の砂糖入れちゃうみたいに。そうして溶けきらずじゃりじゃりと砂が歯に当たる様なあの感触は彼女の罪の暗喩だったのかもしれない。

面白く観ながら、この物語を面白く観てしまうことそのものにこの作品の本質があるのだと感じたりもしました。
過激化するインフルエンス、スキャンダラスな刺激を求める好奇心や欲求、そうしたものが潜在的にあるということが舞台から跳ね返って観客に向かうようでもあった。
あと、男性から男性への嫉妬や支配欲や征服欲ががっつり描かれていて、こうした場合、どちらかというと男→女あるいは女→女で描かれるパターンが多い気がするので、男性間の軋轢や破綻にズームがなされていたことにすごく意味があると思いました。これもまたホモソーシャルであり、トキシックマスキュリニティだなと。人が人を消費することについて考える帰路でした。

私は日頃から「女同士は怖い」、「女の揉め事はネチネチドロドロで嫌だ」といった言説や、(それに比べて)「男はさっぱりしたもんよ」的ムーブには断固否定派なので、男性間の嫉妬や軋轢、支配/征服欲が相応の粘度で描かれていたことがまずいいなと思ったのでした。

セザンヌによろしく!

セザンヌによろしく!

バストリオ

調布市せんがわ劇場(東京都)

2025/06/01 (日) ~ 2025/06/08 (日)公演終了

実演鑑賞

舞台が散らかる毎に鮮明になる心象風景。散らかった所から何かを探し出す必要がある事、流れるこの涙が水である事、叫ばれるその声が振動である事、海や山水平線や稜線がこの身体に在る事をバストリオの演劇は教えてくれる。潮騒や山彦の様に繊細で心強い応答だった。

作品から受け取ったテーマを鑑みたときに「満足度」をつけることが憚られたためお控えしますが、
今必要な演劇であったと痛感します。
(せんがわ劇場のHPに劇評をお寄せしました)

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