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シューマンに関すること

シューマンに関すること

劇団東京イボンヌ

サンモールスタジオ(東京都)

2010/03/09 (火) ~ 2010/03/14 (日)公演終了

満足度★★★★

作り手の愛を感じる
東京イボンヌ第四回公演は、ついに有名な作曲家シューマンと向かい合うということで興味津々でした。

シューマンの人生は楽曲同様、多彩で劇的であるので、ネタは豊富だけれどそれだけに一捻り何かがなければ、その他大勢の中に埋もれてしまう危険があります。

ただ、東京イボンヌが見せてきた劇――練りに練った、しかし決してマニアックに偏らないストーリーと、クラシック音楽が劇を包み込むという独特なスタイル――には、目を見張るべきものがあるので、今回も何かやってくれるはず、という期待がありました。

私もそこそこクラシック音楽は聴いてはいますが、劇の要所要所で音楽が鳴り出すと、その使われ方に改めて心地良さを感じるのです。

もちろん知らない曲もありますが、観劇後それらの曲を追いかけるのも楽しみの一つとなるのです。


今回の「シューマンに関すること」

一つに絞らせて頂くとすれば、最後、シューマンに忠実なまでに自分の人生をなぞった芦屋小太郎の頭に交響曲第三番「ライン」が流れたところ。

「ライン」はシューマンが不遇だった一時を経て幸せを感じた頃に作られた曲で、精神病院に入院した芦屋のタクトがこの曲を奏でた時は、一瞬鳥肌が立ちました。

ここに作り手の思いを特に感じました。
あの重厚で壮大な第一楽章が鳴り響く中、幕を閉じるのです。

心地良い余韻を感じました。

ついに狂って精神病院入院で幕、と聞くと悲劇的に感じるものですが、音楽の力というか効果というか、劇中でも触れているように、シューマンの晩年は哀しいものだったということへのアンチテーゼにもなっていると受け取れました。

東京イボンヌの作る劇には、題材への温かな思いが感じられます。それが今回はシューマンへ存分に向けられていたのです。

しかし単なる持ち上げではなく、取材した中での結果であることは、シューマンを語る台詞でも実感出来ること。

シューマンという題材を現代風にアレンジし、よりドラマチックに生かしたことは、劇作の醍醐味ともいえ、作り手の技を感じさせました。

多少、マニアックなネタもありましたが、そこは飛ばしても、緻密でありながらスッキリする仕上がりだったと思います。

そして、役者は簡素なセットに耐えうる力を持った人ばかり。

道具は最小限に、あくまで、人間の表現力で劇を語る。

第二回公演からこれが顕著になってきている感がありますが、今回はセットは最後の場面以外はそのままで、舞台の前後を別空間と見做しての展開。

違和感なく観ることが出来たのは、やはり舞台に立つ役者の上手さですね。

これも東京イボンヌの魅力の一つです。

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