
1
三人の密偵
劇団チョコレートケーキ
台本も演技も極めて質が高い。近代史物が好きなのでなおさら面白かった。諜報員同士の駆け引きや腹の探り合いが話の中心になるのかと思ったが、むしろ、ああいう時代にあっての家族のきずなや信念が中心になる重厚で深いストーリーであった。一年の最後に観るにふさわしい演劇。

2
受取人不明 ADDRESS UNKNOWN
アン・ラト(unrato)
再演だそうだが、自分は今回初めて。Aチームでの鑑賞。二人芝居だが、それぞれ相手への書簡を口述する場面のみ(その際の演技や演出はある)の形態で表現上の制約が多いはずの設定だが、最高に面白い。制約ある設定をうまく利用した巧みな台本で人間心理が浮き彫りになる。往復書簡だけでここまで劇的な構成の物語を作り出すとは。タイトルも意味深。
二人の俳優たちの演技もこの巧妙な台本を見事に舞台上に実現する素晴らしいものだった。天宮良氏のもっと若い頃の舞台を観たことがあるが、今回観て、何と円熟というか貫禄がついたものか、と。他のチームも観てみたいが、チケットは残っているのだろうか。

3
埋められた子供
劇団昴
プログラムに書かれていたが、作者のサム・シェパードはベケットに傾倒した時期があったらしい。不条理で、暗くギスギスした、ショッキングな作品。
なんだか変で独特な登場人物たちを演じる俳優たちの演技は優れており、この作品のグロテスクな雰囲気を上手く伝えている。特に父親役は凄い。演出も独特で、家の中であるはずの舞台上には砂が敷きつめられ、その上で時に激しい演技をするので砂埃が舞い上がり、俳優たちは砂まみれになる。床が砂で埋まっている不自然さが汚らわしさや不気味さを高める。意図されたことと思うが、狙いどおりなのではないか。

4
ガラスの動物園
滋企画
どの俳優も素晴らしいが、特に女優二人は秀逸。演出もよく工夫され、細部に至るまで考え抜かれていると感じられる。すみだパークシアターの舞台を目一杯広く使って奥行きや横の広がりを効果的に使っている。

5
砂漠のノーマ・ジーン
名取事務所
台本が非常に優れており、空想の会話で語られる物語の世界に引き込まれた。家族の複数の人物を演じる森尾舞氏の演技が実に素晴らしい。ほとんど一人芝居。この演技がなければ成り立たない作品だろう。

6
ズベズダ
パラドックス定数
縦断上演を鑑賞。青年座版の2倍の長尺ということもあり、ストーリー展開のディティールがより詳しく描かれているし、主人公コロリョフの死後の話も、ほぼ現在に至るまでずいぶん入れられている。専門的な事柄や歴史についてよく調べられそこから緻密に創作が組み立てられた驚異的な台本だ。また、青年座版では演出ゆえかカラッとした明るさがあったように記憶しているが、本上演はパラドックス定数らしい基本的にシリアスな雰囲気(いくつか笑いをとる場面があるとしても)で照明を落とした暗めの場面も多用されていた。段差が付けられた簡素な舞台を巧く利用した演出はなかなか優れている。それにしても、難しい専門用語や発音しにくいロシア人の名前が散りばめられた大量のセリフを6時間も駆使し続けた俳優たちは絶賛に値する。

7
ずれる
イキウメ
これまでほど奇想天外ではないが、否、この劇団の奇想天外さに慣れさせられてしまっていてそう感じるだけなのかも知れないが、やはり想像力豊かでメッセージ性もかなり明確。ずっと室内のシーンだけなのに、外から聞こえてくる動物の鳴き声など、家の外の世界で起こっていることを観る者に強く意識させ想像させるあたり、実に素晴らしい。