満足度★★★★★
2日目公演を観劇しました。小劇場の舞台は好きだけど、はじめてみる作家さん、はじめてみる俳優さんたちで、先入観がないのが良かったかもしれない。
圧倒された。これは、舞台が近い、それだけじゃない。
小劇場のキャパシティはもったいないのでは、と思ったけれど、あのキャパシティでなければできない、とも思う。
終演までにまた行きます。
ネタバレBOX
「ジャンヌ・ダルク」という少女のいくつもの可能性(奇跡というべきだろうか)を、女優の切り替えによって表現してゆく演出。
いなか村の敬虔な少女、
家族を奪われ、かなしみと復讐に燃える少女、
啓示を携えて皇太子への使者として立つ少女、
剣をとり騎士として従軍する少女、
フルール・ド・リスを掲げ、司令官として君臨する少女、
そして、もう、だれでもない、少女。
すべてがジャンヌ・ダルクであり、だれ一人としてジャンヌ・ダルクではない。役の切り替わりのベルがあらわれるとドキドキして高揚した。
ラストシーンが近づき、シャルルや、ジャックや、神学者たち、民衆たち、みなが思い思いの少女を思い浮かべて「ジャンヌ」を思う。もうあなたのジャンヌはどこにもいない。ここにいるだれでもない少女のなかに、あなたはあなたの愛したジャンヌを見出せるだろうか。
変わってしまった彼女を、あなたは許せるだろうか。あなたは愛せるだろうか。ジャンヌの胸にロザリオが揺れている。それは木の、真鍮の、銀の、小さな、飾りのあるロザリオ。「わたしの祈りが足らなかったのです。」とジャンヌが叫ぶけれど、彼女はつねに祈りとともにあった。矢を受けて傷ついたときでさえ、ジャンヌは祈りのために起き上がり、彼女のための正午の鐘を望んでいた。
ジャンヌはだれでもない。観客のわたしも、もう一度ベルが鳴ったら、もしかしたらジャンヌだったかもしれなかった。
だって、あなたもわたしも、葡萄酒を飲んだのだから。