平穏に不協和音が
演劇企画集団LondonPANDA
仙台市宮城野区文化センター・パトナシアター(宮城県)
2018/04/04 (水) ~ 2018/04/06 (金)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/04/05 (木) 15:00
大河原さんの舞台にやはり外れなし。盟友であろう二人の俳優の細やかで丁寧な演技。夫婦に相応しいリビングルームの舞台装置の簡素な美しさ。小洒落た棚に二人の生活を示す、写真や小物が整然と並んでいるのを、私はオペラグラスで何度も確認した。さり気ない音楽も効果的。神は細部に宿りたもう、芝居の神様の眼差しのような柔らかな照明も絶妙だった。良かった、感動したで終わらせても良い。
一筋縄で行かせないのがロンドンパンダの面白さ。時間ギリギリに入場した私に案内された座席は、罰ゲームのようにほとんどステージの内側、下手側の一番前。プロローグの妻が謎めいた電話をする場面は覗き見気分。1場のワンオペ育児の離婚話には一緒に熱くなった。中村さんの後ろ姿、凄かった!大河原さん、社会派でも行けると思いきや。
スマホの音と光が舞台を動かす。セックスレス夫婦という事情はあるにしても、クールな美人妻にあんなことを言わせて。それにしてもノーメイクの中村さんの熊の着ぐるみの寝巻き姿は可愛かった。熱血漢風のハンサムな浦川巧海さんは女装趣味でブラジャー着用の実演を熱演。舞台の光の輪の側、下手最前列にいることを忘れてムフフと大いに笑った。
人間、何かしらの秘め事はあるものだ。ワインを飲みながら、夫婦らしく明け透けに語り合う姿に、もしかしての期待を持たせながら二人は別れる。妻が、自分の持ち物をジグソーパズルのような棚からピースを外すように取り出すシーンにも、神は宿っていた。
ラスト、ひとりぼっちの夫が息子の誕生日のお祝いにかけた電話は多分着信拒否なのか?浦川さんの息子ゆう君への思いを込めた「ハッピーバースデートゥーゆう」の歌声は、私の真上の揺れる白い幕に字幕で映って静かに消えて行った。
ちょっと悲しくて苦い喜劇。いつかきっと、また会えるよね。会わせてあげてほしいな。
終わって20日近く経ったから、ネタバレありで許してください。次作も期待しています。