好き
劇団5454
赤坂RED/THEATER(東京都)
2017/04/21 (金) ~ 2017/04/30 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2017/04/21 (金) 19:30
劇団5454の新作「好き」の初日を観てきた。
ただひと言、「やられた」(笑)
こんなにも何か書かずにいられない衝動に駆られたのも何年ぶりかで、かまどの灰を掻き起こしてくれた劇団5454に感謝の念すら覚えてくる。
初日が跳ねた直後にネタバレをする訳にはいかないのでなんとももどかしいが、いきなり嫌いな食材ばかりの献立を出され、しかもそれがすこぶる旨かったということになろうか。
いや、学生時代に友人のアパートで安い二級酒で泥酔して以来日本酒を敬遠していたのに、大人になって然るべき店で上質な日本酒を飲んだらあまりの旨さに驚いた、といった方がこの想いが伝わるだろうか。
劇団5454の新境地とも言える今回の作品は何もかもが計算されていて、そこには当然必然があり若さの衝動とやっつけ感は微塵も感じられない。故に滑らず観ているこちらが恥ずかしくもならない。そう全ては作家の緻密な計算とそれに応える役者の力量。その二つがすれすれのところを見事にかっさらっている。
新境地でありながらもずっと劇団5454の作品を追いかけてきたファンも満足させるお約束の部分も見応えがあり、松田聖子や松任谷由実が新しいアルバムの曲で新境地を披露しながら往年のヒット曲を織り交ぜファンを満足させるコンサートツアーを行っているのに通じるものがある。
なにより、彼等がこの新境地を心の底から、いやコロコロココロの底から楽しんでいるのが伝わってきて、こちらまで幸せな気持ちになれたのが嬉しかった。おそらく今まで封印していた自分達がやりたかった事、即ち「好き」なことに真剣に対峙し、それを世に問う為にはどのように表現したらいいかを、心が折れる寸前まで切磋琢磨しそれを贅沢にも全部詰め込んだものを満を持して発表したのだろう。そんな作品が面白くない訳がないではないか。
そしてこの作品は観る側の日本語の能力で面白さが変る。作家が仕掛けた言葉遊びにどれだけ気付くかでより楽しめる事ができるのも面白い。主人公のかなり長い独白の語感とリズムの良さは必見。日本語を吟味し推敲し続けた作家の仕事が感じられる。
終演後の挨拶で劇場の大きさ故に残念ながらまだ完売はしていないと案内された。
いや、彼等にとっては残念だが観る側にとっては席が残っているというのは幸運以外の何者でもない。
とはいえ、後半は絶対完売するだろう。良いお席は早めの確保をお勧めする。
最後にこれからご覧になる方にアドヴァイスを一つだけ。観劇当日のディナーの予約は30分遅らせたほうがよろしいかと。
幸福は初夏の赤坂で手に入る。