さんかくのたね
Pudding☆Ring
シアターノルン(東京都)
2015/11/20 (金) ~ 2015/11/24 (火)公演終了
満足度★★★★★
優しく、刺さる
深いモラトリアムの沼に嵌まり込んでしまった主人公、虚弱体質で引っ込み思案なヒロインと子離れできない母親らが、農業体験での出会いや事件を通じて成長する話。
いくつもの親子関係が出てきて、それぞれ問題を抱えてはいるものの、どれも開いてみればひたすらに温かく優しい。そして親子関係が縦糸であるとするならば、優しいが上手く表現できない親、親を思うが上手く動けない子供をあるべき方向に後押しする仲間の存在が、物語の横糸であろうか。
優しい台詞を次々に投げ込んでくる脚本が秀逸。甘すぎると感じるか、その甘味を糧に元気をもらうかは人それぞれであろうが、親や仲間の有り難みを感じたことのある人、モラトリアムを拗らせた経験のある人の心には、深く刺さったと思う。
一言で言うと「泣ける」のだが、別に傷口に塩を擦り込むようなテクニックを使っているわけではなく自然に、登場人物と一緒に泣けるようにできているのが良い。
本物の土を入れたセットも良かったが、劇場の構造上、席によっては見づらかったかもしれない。
Thousand and one nights
演劇集団Rock×Lock
上野ストアハウス(東京都)
2015/06/03 (水) ~ 2015/06/07 (日)公演終了
満足度★★★★
まるでコミックのよう
演出家兼アクション派俳優伊藤翼主宰団体の第二弾。旗揚げではほとんど出演がなかったが、今回は主宰自らほぼ出ずっぱり。彼のどこか人間離れした軽妙さが、漫画チックな世界観によく合う。
「神器」や「精霊」が鍵を握る物語は、漫画やアニメにはよくある流れと言える。しかしそれをそのまま舞台に持ってきて、演劇らしく独特の美術や殺陣で表現したところは面白い。
もっと複雑で長大なストーリーにできる余地があるところを90分にまとめた潔さも、漫画のような気軽さでいいと思う(個人的に普段どんでん返しに次ぐどんでん返しみたいな作品を多く観ているのもあり)。ちょうどコミック一冊分くらいだろうか。
観客は出演者のファンが多く、大半が大人だが、もっと若い人にも観てもらったら刺さりそうな気がする。
SHUNPU Gaiden ~春風外伝~
株式会社 レジェンドステージ
博品館劇場(東京都)
2015/04/09 (木) ~ 2015/04/12 (日)公演終了
満足度★★★★★
粋なエンタメ
当初は女性ばかりの客層とあまりの客席の反応の良さから、いわゆるイケメン舞台かと思ったのだが、そうではなかった。フレッシュな若手と芸達者な中堅・ベテラン、男女魅力的なキャストがよく噛み合っていた。
演劇というより、ストーリー仕立てのショーと言うべきだろうか。「ごった煮」「ジャンク歌舞伎」を謳うだけあり、歌にダンスに殺陣にコントにタップに様々な要素が詰め込まれている。しかし自然にシーンが繋がっているので違和感は少ない。
舞台上は劇と劇中劇と、一部素?の間を絶えず行き来する。客席も、単なる観客から、手拍子を打ったり心の中では一緒に踊ったりして、気分的には参加者にもなりながら、粋な登場人物達の織りなす熱狂に巻き込まれる。
普通に濃厚なストーリーのある演劇や文字どおりの「歌舞伎」を期待して行くと肩すかしを食らうだろうが、ジャンルに囚われないエンターテインメントショーとしては、質が高いと思う。
余談だが、蒼井翔太演じる桃奴、遠目に見ると本当に女性に見えて、たまに可愛いのが悔しい。