BGMセルフライナーノーツ
今更だけどここに書いてもいいかな、と。
ネタバレBOX
CD化するにあたり、曲名つける?ってきかれたけど、つけなかった。考えてなかったw ので、Mいくつ、という、実にそっけないタイトルで申し訳ない(^_^;)
M1 独白のシーンの曲。冒頭のアスカの「時間とは・・・」、それから有斗の独白でも2回使われた。佐古田指定は「静かに、でも意味ありげに」。特に何も考えずに作ったw
M2 ちょっと奇妙で滑稽なアスカの曲。前半はラブコメ的な曲で世界観を紹介する面がある。
M3 時原家のテーマ。佐古田の指定は「日常曲その1」のみw アニメ的、ゲーム的な日常曲をかなり意識して書いている。
M4 第二カガク部のテーマ。開始1分程は特に怪しげな、不穏な、ちょっとサイバーな感じになるように作ってある。便利に端折られたところからリラックスする。時計のカチカチいう音がずっと入っている。途中雰囲気が少し変わるところだけ時計はゆっくり進む。実はこの雰囲気の違うパートは、タイムマシンを作りたいと入部してきた新入生の有斗を回想するような気持ちで作った。回想の中、ゆっくりと流れる時間。そして時が現在に戻るのと共に、時計の針はいつものスピードで時を刻み続けている。
M5 夕暮れ・帰り道のテーマ。もどかしかったり性急だったり、慌ただしくいろんな展開を詰め込んである。自分的な挑戦はギャルゲとかによくあるあの音ねっていう感じと、どことなく夕暮れ感を音色だけで表すこと。
M6 エロ姉のテーマ。恵留の悪戯心、キャラクターの明るさ、あわよくば思いやりが出せればなーと作った曲。あと、有斗の振り回され感w 実はこの曲が超難産だった。最後に提出した曲w
M7 屋上で星空を見るシーンの曲。曲の展開と演技が完璧なシンクロをしてた。具体的に言うと、有斗が空を指さすところで曲の展開が広がって、未来に想いを馳せるところで曲の景色がぶわーっと広がる。それで、もう寝るから家入るよってとこで曲のエンディングにぴたっと。音響さんと役者さん達の職人技。ちなみに不意に見つめ合ってしまう瞬間と、有斗のことが好きだよっていう瞬間には音楽は何もしていない。わざと知らん顔をしているのもミソ。
M8 尾行&ショッピングのテーマ。ちょっぴり滑稽で明るさがあればあとはなんでもよかったw 結果的にこれ以上ないくらいオーソドックスなパターンのモントゥーノになった。作ってる途中で、ラテンって何でも盛り込めるだけの懐の深さがあるんだなーと発見した。
M9 輝更のテーマその1。回想シーン。俺の台本には「切な可愛く!!」とのメモ書きがあるw ここでちょっとウクレレっぽい音色のギターをバックに鳴るのは輝更のテーマのサビとBメロの部分。ちなみにこのアレンジはカウボーイビバップのある曲に影響をかなり受けている。
M10 無言劇のシーンで流れる曲。OP曲のちょっとはねたアレンジ版。最初ピアノ一本で提出したらなんか寂し過ぎる、とダメ出しくらった。自分でも改めて聴いてみたら、「切ない感じにすら聴こえるわww」と、ブラシのドラムとジャカジャカしたアコギを足して再提出した。NG食らった唯一の曲w
M11 輝更のテーマその2。しつこいくらいここは切ないシーンですよ、切ないシーンですよってお知らせしたのち、輝更のテーマBメロ、サビと出てくる。メロディで言えばM9と同じ材料なのに、聴き比べてみてくださいな、これが編曲の妙ってやつですよw
M12 カナタのテーマ。さて、曲ができた瞬間とはいつのことか。作っていると、突然ボコっと塊で浮かぶ瞬間がある。あとはそれにお伺いを立てながら、これだとかこれじゃないなとか広げてくだけ。ひとりでやってる場合は、浮かぶところまでが作曲で、広げてくのが編曲。おそらくモーツァルトとかは45分とか1時間とかの塊をボコっと掴める人だったんだろうなー。45分の交響曲作るのに数秒しかかからないw なんでこんな話をしてるかというと、この曲、緊迫感のあるリズムかー、と、バスドラムの「ドッドッンドッ、ドッドッンドッ、ドッドッンドッ、ドンッドンッドン」っていうパターンを打ち込んだ瞬間できたからw 完成品の姿になるまで40分くらいだったんじゃね?w どこも直すとこがないw
M13 佐古田の指定「何気ない日常のはずだったのに、徐々に物語はクライマックスに突入していく感」しかも、別のシーンでも使うとか。そっちにも合うように作らなきゃいけない。。。そんなん書けるかよwwと思ったけど、割と針の穴を通すようなコントロールでうまくできたかと。実はこの2つのシーンの共通点を見つけまして。ひとつは恵留が有斗と輝更におどけて話してたのが、ちょっとマジになって二人のことがガチで大好きだから、と言うシーン。もう一つはカナタが諦めない有斗を止めにきたのかと思いきや呆れながらも手を貸してくれるシーン。並べて何度も読んで気づいた。このシーンはブラコンとシスコンがどっちも普段のキャラからちょっとだけデレるシーンだ!とw そしたら急に書けたんですよw
M14 佐古田の指定は「三角関係の修羅場、ついに訪れる」とだけ。これ、曲の指定じゃなくね?w 台本に「ぐちゃっと」というト書きがあって、悲惨に近い悲哀感を出そうと思った。ピアノと弦楽器の割合はどうしても増えるものだけど、その分音色には細かくこだわっている。同じ弦楽器でも、痛いのかポップなのかクラシカルなのか流暢なのかぎこちないのか、いろいろな可能性がある。この曲の場合は空白をありえない程挟むことで、ヒリヒリする弦楽器の感じになっている。
M15 タイトルをつけるなら「このたわけが!」かなw 機々先輩がめちゃめちゃかっこいいシーン。悲哀を越えてちょっとうらぶれてる有斗に火をつける。熱さメーターをじりじり上げる弦がうまくできて、ほんと機々先輩男前やわーって感じにできたw この曲の終わりにどうしてもエヴァンゲリオンが入るのでw、そこをどういうテンションにしてやればいいのか難しかったw お客さんもシリアスなシーンなのに一番笑ってたしw
M16 輝更のテーマ。佐古田の指定「輝更の青春。強い覚悟、意志、真っ直ぐな少女の思い。そして残る、爽やかな痛み」。最初に台本読んだ時から、ここがBGMのクライマックスだ、ここは輝更のテーマだ、と決めてた。ここで輝更のテーマを効果的に聴かせるために、回想シーンと背中押しちゃうシーンも輝更のテーマメロディを使おう、と。輝更のテーマが初登場のAメロから順番に流れる。このシーンは大きく3つに分けられる。アスカの背中を押す、有斗に告白する、恵留に慰められる。音楽単体で聴くと、最初にビートが入ってくるのに、途中で抜けてそのまま戻ってこないので、変な構成だと思うかもしれない。が、輝更の気持ちには即した動きなので観てて違和感はなかったはずだ。輝更はここに至るまで有斗のために、アスカのために、藁にもすがる思いで聞き込みを重ね、情報を集め走り回っている。募る焦燥感。それがアスカと本音をぶつけあって霧消する。清々しさすら感じられる。そのための演出だ。アスカとの会話では「恋はすごいんだぞ~難しいこと全部、恋の力でぶっ飛ばしてみせてよ!」辺りで輝更のサビメロディが流れるように工夫した。次の有斗とのやりとりのシーンはそれまでなんとなく盛り上げ役として輝更のメロディに絡んでいたヴァイオリンがいつの間にか2本になって、何度も輝更のテーマを変奏し、輝更の覚悟、真っ直ぐな思いを煽る。やはりサビメロディ辺りに告白と、「だから早く行っちゃえ」が来るように工夫した。恵留姉が来て輝更の未来へと向かうパートはとにかく爽やかさが残るように、後をひくように、未練がましくヴァイオリンが残り続ける。
M17 有斗とアスカのシーン。弦はとてもヒリヒリする音にしてある。かなり後半の2分50秒辺りまで人間的なフレーズも弾かない。ひたすらロングトーンのみで構成している。ヒリヒリする弦。それに対し、メロディを奏でるピアノは最初は大丈夫?聴こえる?って音量で鳴り始める。これは後のメロディを印象づけるための演出だ。ピアノは二人の会話を音で縁取りするようなつもりで盛り上がってゆく。そして2分15秒辺りに音楽の山場が来る。ここまで80分に渡って舞台装置、背景であり続けたBGMが、ちょっとだけ客席側に飛び出る絵になる、迷惑なくらいはみ出る瞬間。打ち上げで話を聞いたら、有斗役の中舘くんはここをベストのタイミングにハメようとしてくれていたらしい。彼は作り手気質がかなりある人なので、自分が主演で、最後の決めどころで、溢れ出る感情をぶつけ合う演技をしているのに、BGM作者の俺のエゴを作品の力に昇華できないかと試行錯誤してくれていたのだ。この山場から先は二人の覚悟、決意に寄り添ったまま、来たるべきエンディングに向けて、少しずつフェードアウトする。そしてED曲にバトンを渡す。
CDを聴きながら、舞台を思い出しながら読んで貰えたらいいなと思います。