満足度★★★★★
小劇場が好きな方にお勧め!
舞台の魅力はいろいろあると思うけれども、小劇場のよさは何といっても役者との距離の近さ。舞台の隅々まで好きな所を観られる上に、役者の小さな息づかいに滲んだ感情まで味わえる。つまり、舞台上の魅力的な役者をとことん味わえるのが小劇場だ。
逆に言うと、役者が残念だと小劇場の魅力は半減してしまう。チラシの顔写真や物語のあらすじで選んで失敗という事もなくもない。
その点、この舞台は完璧だ。ベテラン中堅の細やかで的確な演技、若手のパワーみなぎる魅力、笑いとペーソスの変化球、それぞれの役がそれぞれの役として、また場の部分として、完璧にその仕事をこなしてみせてくれる。出演者の誰を追っても、楽しく哀しく美しい。
それは当然彼らが総力で紡ぎ出す物語そのものの美しさによるものでもあるのだけれども。
なんか、ああ芝居っていいなー、って思える舞台に出会いたい、そういう方にガッツリお勧めできる舞台だった。
ネタバレBOX
この舞台のテーマは複雑だ。
問題とされている事周辺の、いったいどこが問題なのか、という事を考えるだけでも、現実の持つ否応なさのようなものに押しつぶされそうになる。
ただ、この脚本はそれに対して正しい答えとしての回答はしない。ただ姿勢だけを示す。何もかも人間の物語じゃないか、と。ぼくらが感じ、ぼくらが考え、愛し、悩み、生きていく、結局は全てそのことそのものなのだと。
自分の人生に起きたすぐには得心のいかない衝撃。そういうものどもと向き合って来た脚本家の骨太な魂がそこにある。
本当の物語、抗いがたい現実はおそらくこの後にあるのだ。ぼくは是非ともその続編を見せて欲しいと思う。
満足度★★★★★
とにかく楽しい!面白い!
小気味いいテンポの台詞とよく動く身体で、まるで映画のカットが積み上げられるように場面が進んで、息つく間もないジェットコースターのような舞台でした。
ネタバレBOX
舞台が定時制高校なのでいろんな人がいます。
八百屋さん、魚屋さん、コンビニ店長に、主婦に、お嬢様。と、その家来。真面目な学生さんもいれば不思議っ子ちゃんもいる。
そんな連中がちょっとイカれた校長とテンション暴走気味の新米教師とにあおられて、クリスマスイベントに映画を一緒に撮るという話なので、もうスタート時点で既に面白かった。
ただでさえそんな風にいろんな人がいる上に、その中に児童劇団員やら自称女優やらまで混ざっているので、物語はもうはちゃめちゃのめっちゃくちゃ。
ダッチロールしまくりな映画撮影が進行する一方で、もちろんしんみりあり、キャラクターの成長ありで、愛にあふれた物語でもありました。
思い出の先に今があり、今の先に明日がある。だから。
…そんな事を考えながら帰路につける、いい時間を過ごせる舞台だったと思います。クリスマス前に心の洗濯でもしよーかな…という向きには絶対お勧めです。
満足度★★★★
ほっこりした佳作
ざしきわらしと住民の交流の物語。
笑いあり、ダンスあり、ちょっと涙ありの楽しい舞台だった。
脚本で、両者の交流の条件にちょっとしたストレスがしかけてあって、そのジレンマが絶妙に哀しく美しい。
ネタバレBOX
ざしきわらしは淋しい人にしか見えない。ざしきわらしの仕事はその淋しい人を淋しくなくする事。という事は、ざしきわらしは住民を淋しくない人にする事によって、自分は相手から見えなくなってしまうのだ。
まあここまでだったらそれはそれでいいんだけれども、哀しい事にこの物語ではざしきわらし達自身がまた淋しがりやときてる。だから、物語がハッピーエンドに向かえば向かう程ざしきわらしに感情移入している観客は悲しくなるという構造になっているのだ。
そういう意味では、住民の転居理由の説明がなかったのは少し残念だった。ざしきわらしによって淋しくなくなった住民たちは、彼らのことをすっぱり忘れてしまうという設定なのかもしれない。まあそれも現代的ではあるけれども、特に第2話の女性などはそういう人としては描かれていなかった気がする。もう少しその辺りの機微が描かれていたら、もっと登場人物たちの配置が生き生きと成立していただろう。
役者陣はみなさん楽しんで演技しておられて気持ちがよかった。キャパのあるハコではないから、客の反応がどっとくる…という訳にはいかず、それは少し気の毒だったけれども。