満足度★★★★
『特別編』について。
どなたも書かれてないようなので、『「オセロー」がよくわかる特別編』について。
こちらでは『通常編』でカットされた部分を上演。
劇場空間をはみだす公演だった。
前日の土曜日は大雨のなかこれをやったのかと思うと、おつかれさまでしたとしか言いようがない。
ネタバレBOX
『通常編』は、デズデモーナの死で終わる。
『特別編』は、オセローとデズデモーナの掛け合い漫才のような前説から、ビアンカ宅でキャシオーとイアゴーと(『通常編』には登場しない)ロダリーゴーが刺しつ刺されつ、というシーンではじまる。『通常編』とは、オセローをはじめ配役も変更されている。
そこから下手人が劇場外へ引き立てられるのと同時に、観客も外へ誘導される。“朝の商店街、お静かに!”と大声で怒鳴っているのも、矛盾していて笑える。
東大キャンパスへ向かう道の踏切では、電車の通過音で台詞がかき消されるのまで計算された小芝居。渋谷に向かう列車の最後尾には、オセローとデズデモーナが乗っている。
彼らを追え! ということで切符と旗を手渡された観客は、なぜか渋谷とは逆方向、吉祥寺方面行きに乗車させられる。
途中で使者が“逆方向だわ!”と気づいて下北沢駅で降ろされるのだが、そこにはオセローとデズデモーナが先に到着していて、北口に逃げる。
観客はそれを追って改札を出るのだが、そこには血のついたティッシュが。
他にも、この話の鍵となるハンカチなどが仕込まれていた様子なのだが、街の人に掃除されてしまったようで、現物がないのも可笑しかった。
道の先にはデズデモーナが死んでおり、南口に抜ける陸橋ではキャシオーがオセローを捕らえている。
オセローは“昼の本編を見ていただくかたもたくさんいらっしゃいますが、開演まで4時間ほどあり、駒場東大前では時間を持て余すと思い、若者の街・下北沢までご案内しました。南口には定食屋もラーメン屋も下北丼もあります。北口にはハンバーガー屋もあります。ごゆっくりおくつろぎください。ぐはあっ”と絶命する。
ここまで、約45分。
お散歩演劇ポタライブでも、さすがに観客を電車に乗せたりはしないだろう。
こちらは観客を電車に乗せ、さらにその車内でも地味に小芝居していたのがポイント高い。
ツッコミどころは、タイトルに『「オセロー」がよくわかる特別編』と謳っているが、「よくわかる」どころか「さっぱりわからない」ってこと。これだけを見ても「シェイクスピアの『オセロー』を見た」とはとてもじゃないが言えない。
その点にさえ目を瞑れるなら、他ではできない体験だったので、楽しかったと言える。天気もよかったし。前日、大雨の土曜に行ってたらたいへんなことになってたかもしれないが。