
第二回蒸気展覧会
蒸気倶楽部
新宿眼科画廊(東京都)
2025/11/22 (土) ~ 2025/11/24 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/11/23 (日) 13:00
日本のラジオ的なシリアスなトーン/演技で素っ頓狂な会話を交わす「失バランス感」の可笑しさよ。
その一方、「立候補受付」でのシニカルさもあるなど、人によって笑う部分が異なるであろう「広角マルチコント」、他に類を見ないのではないか? 第三回はどうなる?

THIS HOUSE
JACROW
新宿シアタートップス(東京都)
2025/11/19 (水) ~ 2025/11/25 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/11/22 (土) 13:00
ちゃんと翻訳劇でちゃんとJACROW。会話の感じやビッグベンの文字盤(の一部)を配した装置の印象は翻訳劇っぽく、内容は「政治劇のJACROW(←プレトーク冒頭の中村主宰の名乗り)」で、「両親の遺伝子をきちんと継承した嫡子」みたいな(真顔)。
で、作品に関する予備知識的な10分ほどのプレトークに続いて始まる本編、「このイントロはもしや?」なあの曲を出演者たちが歌う(!)のを始めとして4曲も歌が入り(2曲は戯曲指定、残り2曲は演出選曲とのこと)もうそれだけでも娯楽性十分。
そうして描かれるのは1974年に労働党が少数与党として英国の政権を握ってから4年半の顛末、少数与党とか初の女性首相とか今の日本と共通項がありながら内容的には天と地ほど異なるのが面白いと言おうか情けない(毒)と言おうか……。
また「いかにも政治家たち」な出演陣の役作り(衣装・メイク含む)も的確で見事。翻訳劇という「新たな武器」も得たのではなかろうか?
ところで2~3回流れたイントロだけのあの曲はザ・フー「無法の世界」?

近代能楽集 葵上・道成寺
CroixProjec†
APOCシアター(東京都)
2025/11/19 (水) ~ 2025/11/24 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/11/21 (金) 14:00
まずは二胡の弾き語り(?)と二人の舞手による伝統芸能風で始まりそこに洋装の役者たちが加わりお馴染みのマッチの火を使うパフォーマンスを見せるプロローグから本編二編の上演となり、再びの二胡と舞手によるエピローグで〆る構成はまさに能楽の演目を現代戯曲に翻案した三島の「近代能楽集」の意図を具現化したと言えよう。
それにしてもエアリアルまで使うとはサービス過剰では?(笑)

喜劇王暗殺
トツゲキ倶楽部
「劇」小劇場(東京都)
2025/11/19 (水) ~ 2025/11/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/11/20 (木) 14:00
1932年、来日したチャップリンが首相官邸での歓迎会に気まぐれから欠席したことにより五・一五事件に巻き込まれずに済んだという史実に想を得たフィクション。
「(今後の日本は)右傾化する」という御神託があったり、喜劇王が難を逃れたことで「これで戦争を回避できた」と一同が安心したりすることにその後の状況を知っている身として思うところのものが多く、今、再演する意義を痛感する。
また、喜劇王とカフェーに居合わせた面々の片言と身振り手振りの意思疎通に朝ドラ「ばけばけ」を連想したりも。
あと、アフタートークでの「秘話」も興味深かった。
なお、初演も観ていたが11年前だけにすっかり忘れていた。(爆)

絶滅のトリ
だいだら
中板橋 新生館スタジオ(東京都)
2025/11/13 (木) ~ 2025/11/17 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/11/17 (月) 16:05
絶滅危惧種の鳥の保護/繁殖のために島で活動しているグループの群像劇。
新たに加わったミステリアス(?)なメンバーをきっかけに微妙に保たれていたバランスが崩れてゆくさまを、じっくりと時間をかけて並べたドミノの牌が終盤で次々に連鎖して倒れてゆくように見せる110分。
この終盤の「あの歌」が流れる中、台詞なしに演技だけで見せる手法に奇しくも少し前に観たたすいち「果てなしランデブー」と通ずるモノがあり共時性にビックリ。
あと、(この会場で)かなり凝ったツクリにした舞台美術も見事。
なお、ONEOR8の初演は未見。

その事件、推理小説家には荷が重い
劇団皇帝ケチャップ
浅草九劇(東京都)
2025/11/12 (水) ~ 2025/11/16 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/11/15 (土)
楽日に【Teamルーク】【Teamナイト】を続けて観劇。
初期から会話の巧みさが群を抜いている吉岡作品、シリアスなものは極めて自然に感じられ、本作のようにコミカルなものはああ言えばこう言うだったりボケたりツッ込んだりの「集団掛け合い漫才」状態でいずれにしても演者に技量が求められると思うが本作は(一部噛んだりもしたものの)若手女優陣の健闘により吉岡戯曲の武器である会話の面白さが遺憾なく発揮されていたと言えよう。
ところで最近の女子高生の休日のファッションってあんななの?
世代的なものか、どうもあの衣装では女子大生のようで、そこがちょっとひっかかったが眼福だからイイか(爆)。

再生ミセスフィクションズ3
Mrs.fictions
武蔵野芸能劇場 小劇場(東京都)
2025/11/13 (木) ~ 2025/11/17 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/11/15 (土) 18:00
極めてベタな表現になるが「珠玉の短編5編」。
一つの公演のために一気に書き下ろしたのではないということもあろうが、それぞれタイプが異なりしかもどれもクオリティが高いとはお見事。
その中で敢えて1本挙げるとしたら5編目の「ハネムーン(仮)」か。「そんなのアリか!」/「そのテがあったか!」な発想はメタフィクション好きとしてはもうタマラン!(笑)
あと、役名が初演時の演者なものが多いだけにプレッシャーもあっただろうところ、それに負けず演じた役者陣に拍手!

位置について
かわいいコンビニ店員 飯田さん
吉祥寺シアター(東京都)
2025/11/12 (水) ~ 2025/11/16 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/11/14 (金) 14:00
9年前の初演(未見)の会場がシアターノルンだったと知った上で臨んだので装置を目にしてそのスケールから再演への意気込みを感ずる。
そんな中で演じられるのは保育士たちの奮闘記、というよりむしろ「悲哀記」、中盤でブレイクポイントになるか?という場面もあるものの結局そうもならず2時間半近く続くので観るのに体力を要した。
なお、その場面にデール・ワッサーマンの戯曲(ケン・キージー原作)「カッコーの巣の上を」の深夜パーティーの場面を想起。

千一夜の物語
ヨビゴエ
恵比寿・エコー劇場(東京都)
2025/11/08 (土) ~ 2025/11/16 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/11/14 (金) 14:00
一言で表現すれば「策略/陰謀渦巻くダークなアラビアン・ナイト」。アウトローなシンドバッドがアラジン、アリババらと冒険しつつ王を目指し、やがて……なピカレスクロマン。
分不相応な野望を抱いた主人公がそれを達成するも自滅する内容に(3人の魔女がいることも含めて)「マクベス」を連想しつつ観ていたら終盤にはギリシア悲劇の要素まで織り込んでニヤニヤ。
あれこれ知っているとより面白いよね♪

『はりこみ』
殿様ランチ
駅前劇場(東京都)
2025/11/12 (水) ~ 2025/11/16 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/11/13 (木) 14:00
手配犯が訪れるかもしれないかつての交際相手である女性の部屋が見える部屋で張り込みをする刑事たちを中心とした物語、7年ぶりの再演。
以前観た時同様、各人物の造形が的確かつ細やかで劇中で語られない背景まで思い浮かぶようにリアリティがあり。もちろん現実の張り込みなど知らないが「あんな会話や出来事があるのかもなぁ」な説得力が秀逸。
そこにサスペンス要素のみならず程よい笑いもまぶしてさらに引き戸とドアが両立する装置のギミックまで備えて完璧では?
何年か経ってそこそこ忘れた頃にまた観たい秀作。

第41回公演『テセウスの宇宙船』 第42回公演 『果てなしランデブー』
たすいち
スタジオ空洞(東京都)
2025/11/08 (土) ~ 2025/11/16 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/11/11 (火) 14:00
【果てなしランデブー】
「人が求めていることがわかる」男をめぐる物語、なるほど確かにもう一方の「テセウスの宇宙船」と共通の世界観で「その世界ならこれが起こっている一方であれも起こっていそう」な感じ。
そして「貴方は他者にどこまで寄り添うことができますか?」と問われているようであれこれ考えながら観る。
また、中盤で「あんなことやそんなことがあった」旨を台詞無しの早回しで見せるのも巧い。上演時間短縮効果もさることながらいちいち描かなくてもこれで解ってもらえますよね、と観客を信じているツクリなのが心地よい。
いろんな意味で「いかにもたすいちらしい」2本に満足♪

第41回公演『テセウスの宇宙船』 第42回公演 『果てなしランデブー』
たすいち
スタジオ空洞(東京都)
2025/11/08 (土) ~ 2025/11/16 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/11/10 (月) 14:00
【テセウスの宇宙船】
懇意な知人たちが「どこか違う」ように感じ始めた主人公の顛末、一言で表現すれば「ハートウォーミングなボディ・スナッチャー」で、ちゃんとSFでちゃんとたすいち。
コミカルな表現の中に主人公の不安を描き「果たして真相は?」と観客に思わせるのが巧み
また、冒頭の会話の中の問いかけに「もしや自己アイデンティティがテーマ?(←これもたすいちは得意だし)」と思ったが、それが全編を通して通奏低音のように流れているような気もした。

雷ノ鳥
劇団カルタ
インディペンデントシアターOji(東京都)
2025/11/07 (金) ~ 2025/11/09 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/11/09 (日) 12:00
凝ったツクリの犯罪サスペンス。が、事情が入り組んでいる上に登場人物も多いのでワカり難い憾みアリ。
その一方、映像作品のように短いカット/場を積み重ねるスタイルを可動式の重厚そうな2枚のドアとテーブル・椅子を駆使してスムーズに見せる手法が見事。(映画「ア・フュー・グッドメン」の原作舞台を想起)
あ、でも座り芝居が少なからずあるのに客席の勾配が緩いのは不親切……ってか配慮不足かもなぁ。

楽屋 -流れ去るものはやがてなつかしき-
あサルとピストル
新中野ワニズホール ( Waniz Hall )(東京都)
2025/11/07 (金) ~ 2025/11/09 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/11/08 (土) 13:00
通算9回目(今年2回目)となる本作、やはり古典/スタンダードな作品は解釈/演出により様々に変化するのが面白い。
まずは装置、あちこちに蜘蛛の巣がはっていてまるで「お化け屋敷」の如し。
内容を知っている身としてワカらなくもないが「それはやりすぎでは?」との感も。とはいえ「現実世界の人物には見えないもの」と解釈すればアリか(笑)。
また、最終場面で「喝采」を流すのはウケるし納得♪
それにしても本作、舞台に賭ける役者の執念を描いているだけに出演者は少なからず身につまされるのではあるまいか? 今作でも女優Cの前園さんを筆頭に演技に迫力(!)があって見事。
そんなことから小劇場系の女優4人が「楽屋」の役を取り合う二次創作「楽屋のジジョウ(←事情/二乗のダブルミーニング)」を思いついた(爆)。
ちなみにあの翌日「ウチのカミさんが学生時代に演劇部でニーナを演じたそうなんですがねぇ」などと言いながらヨレヨレのコートを羽織った中年刑事が女優Cを訪れる「続・楽屋」は以前思いついていたが
もしやこれって世代限定ネタ?(汗)

エキセントリックプラネットモデル
あひるなんちゃら
駅前劇場(東京都)
2025/11/06 (木) ~ 2025/11/09 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/11/07 (金) 14:30
エラく久しぶりに観たが「ちゃんと嚙み合って成立しているがどこかズレているような気がしてならない」会話の可笑しさが絶妙。そして基本的には日常的だがブッ跳んだ設定がコソッと(?)入っているのも面白い。
なお、ペットの「あひる」を見た時に「そういう見せ方なのか実は人間なのか?」と疑ったのは最近観た「あの芝居」のせいだ(笑)。

『眼球綺譚/再生』
idenshi195
パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』(東京都)
2025/10/29 (水) ~ 2025/11/09 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/11/06 (木) 15:00
新宿眼科画廊での初演以来7年ぶり。
初演時同様「声による四重奏」な印象だが、終演後に高橋主宰から「配役」を伝えられて大いに納得(そうだったのか!的な)。
また、最近観た複数の映画やドラマに本作の猟奇的な場面と通ずるものがあったが、初演時はそういう記憶がなく漠然と不安を感じたりも。

リヒテンゲールと二つ国の詩
Jungle Bell Theater
萬劇場(東京都)
2025/10/29 (水) ~ 2025/11/03 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/11/02 (日) 14:00
2日昼に【チーズチーム】、3日昼に【野イチゴチーム】を観劇。
魔女の策略により対立が続いている鳥の国と猫の国の和平会議を決裂させるよう遣わされた魔女の配下とたまたま宿をとった魔女を倒す旅をしている者たちが織りなす物語。
ある意味少年ジャンプ的とも言える笑いと感動を仕込んだ王道勧善懲悪ストーリーがよくできているだけでなく、それが「もう一つの物語」に包まれている層構造で終盤にはメタフィクション的な展開もあるという凝ったもの。
さらにそこに昨今の風潮に警鐘となる要素も加えて見事。
また、鳥や猫をはじめとした様々な動物をモチーフにした衣装・メイクや動作の表現も巧みで大いに満足♪
なお「当日パンフレットの配役表示が役名と俳優名を併記するだけで役の説明がないのでどれが誰だかわからないのが難点、今後の改善を望みたい」との旨を Twitter/X に投稿したら後日、役に動物を書き加えた画像をアップしていただけた。感謝♪
こういう細やかさも30年の蓄積によるものか。
あと、クライマックスの「あの場面」で「デ、デカルチャー!」と思ったのはσ(^-^) だけではあるまい。また、Tツノコプロの複数のアニメキャラを連想した方はおナカマです。(笑)

IN THE WOODS
Oi-SCALE
駅前劇場(東京都)
2025/10/29 (水) ~ 2025/11/03 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/11/01 (土) 14:00
キャンプ場の夜、焚火を囲んだ人々が入れ替わりつつ交わす会話。
対面客席で最後列からも演技エリアが近いことやリアリティの溢れる舞台美術から観客もその場に居合わせているよう、というのが奇しくもほぼ同じ公演期間で上演されているエンニュイ「かえるまで、が。」と通ずるモノがある(小劇場シンクロニシティ)が、本作はやがて不穏/不安な空気が漂い始めて怪談じみてくるのが相違点。
そしてそんな終盤に「ある文学作品」を連想した旨を終演後に林主宰に伝えたら特別席特典のパンフレットにはまさにその作品との関係が掲載されているとのことでアタリ♪
そりゃあその文学作品が好きな身にとって響くワケだ。
そんなこんなでいかにも Oi-SCALE らしい一作で満足。

人のいぬ山
発条ロールシアター
中野スタジオあくとれ(東京都)
2025/10/31 (金) ~ 2025/11/03 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/10/31 (金) 19:00
雷雨に遭いたまたまあった小屋(?)に避難した登山客たちと山に住んでいる者の一夜の物語。コンプレックスを持った面々がそれを克服してゆく優しい話……と思いきや終盤で現代社会の闇(?)をチラリと、的な
そして「舞台表現だからああだが劇中世界ではアレ」という「お約束」を逆手に取った「そのまんまかい!」な手法にしてやられる。その「騙された快感」も楽しからずや。

マクベス - その名に惑わされた男 -
劇団天動虫
シアター711(東京都)
2025/10/29 (水) ~ 2025/11/03 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/10/29 (水) 14:00
マクベスというのは魔女の言葉を信じて分不相応な野望を抱いた男の自業自得な話では?と思っていたが、本作ではマクダフをフィーチャーしており「そうか、マクダフにとっての悲劇なのか」という気付きがあった。
夏に観た OuBaiTo-Ri版で「小心者マクベスの自滅」面が強調されていたのと好対照で、古典というのは演出/解釈によって印象が様々に変わるのが面白い。
で、歌って踊る最終場にマクダフだけが登場しないことにノーマン・ジュイソン監督「ジーザス・クライスト・スーパースター(1973年)」の「ヨハネ伝第19章41節(エピローグ)」からの連想でマクダフの身を案じてしまう。自死まではいかずとも失踪したりしていないよね?(笑)