三年物語りは演劇を観る初心者にはぜひともお勧めの団体であるが、観慣れている人にお勧めしても決して恥ずかしくない劇団である。
伝えたいテーマを非常に分かりやすい言葉・モティーフ・ストーリーで爽快に表現する。テーマは人間に普遍的かつ根本的な部分を扱って、生きることに前向きな姿勢を魅せる。脚本藤本氏は、あらゆる個性・生き方を肯定しているように思えてならないのである。ファンタジックな世界の中にストーリーを(しかも登場人物すべてのストーリーを)精緻に組み上げて伝えてくる。どのキャラクターも目が離せるものではない。
しかしまたストーリーのよさだけならば、小説のほうが想像を掻き立てる分、有効な表現媒体となるわけだが三年物語はやはり演劇でなければならない。役者たちが魅力的なのだ。ストーリーを作り出すだけならば、役者はただ台本を間違えずに「読む」だけでいい(この読むは作
者の伝えたいことを「読む」ことも含む)。ここの役者はそうではない。芝居が好きでしかたがない奴らなのだ。台本を読む人形ではない。生き生きときらめいた、人間そのものがそこにいるのだ!
ステージをつくりあげる隅から隅までスタッフや受け付けまでもが、ひとりひとりお互いに「良くやった!でかした!」と言い合っているかのよ
うに魅せつけてくる。今もっとも成長しつつある劇団、見逃せない。