或る、ノライヌ 公演情報 或る、ノライヌ」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.1
1-7件 / 7件中
  • 映像鑑賞

    満足度★★★★★

    劇場で観劇し、配信も観たのは確か初めて。eplus streamingだったが音声、画像ともに実演のクオリティに見劣りせずがっつりと「観劇」できた。
    複数のエピソードとそれにマッチしたディテイル、また戯曲上のアイデアが詰まった劇。宿命的に受動的である人間が、新たな風景の中から能動性の欠片を探すのに「旅」は相応しく、車窓の景色のように移り変わる場面に二時間四十五分はあっと言う間に過ぎる。かつお、という名の犬の目線が効果的だが、飼い主を渡り歩くかつおと、彼が町や旅先で遭遇する「人生の師匠」ジョージの姿は寄る辺ない人間存在を象徴してもいる。
    幾つもの印象的な台詞、おいしい場面、心から愛おしく感じられる人物たち。
    出演者全てが劇団員という、KAKUTAなる集団の成り立ちも独特である。

    ネタバレBOX

    韓国語を喧しく喋るアジュモニの居る新大久保にある元探偵事務所に住む女・國子(桑原裕子)、失踪した彼女の相手(不倫)・正哉が置いて行った飼い犬かつお(谷恭輔)、探偵事務所時代國子に恩義があり、犬の世話を引き受ける男・小波(細村雄志)、建設会社で内部告発をして干された國子の兄・湊人(若狭勝也)。方や北海道の斜里町からそれぞれ上京してある時出会った幼馴染の男女・誉(森崎健康)と聖美(多田香織)、誉が職場で当てがわれた寮の同部屋に住む女性とその同性交際相手のカップル・智恵子(四浦麻希)とマアル(高野由紀子)。新大久保の町から、芝居前半の半ば、かつおと國子、引き籠りのはずの兄湊人が、小波の車で北海道を目指して旅立つ。芝居の三分の二は道中記となり、(個人の回想以外は)時系列に話は進んで行く。
    旅のきっかけは小波が探偵として、正哉の正妻・沙梨(酒井晴江)の経営するエステに潜入して得た情報。札幌のとある病院の入院患者を見舞い、携帯を忘れたらしいという。國子は正哉の影を追うが、誉もじつは聖美の影を追って北海道へ向かっていて、誉と國子は札幌の病院で、遭遇する。

    震災から3年後の設定である。道中、被災の跡のまだ生々しい海辺で、同じく北海道へワゴンで移動中の美帆(異儀田夏葉)と出会う。彼女とは北海道の病院でのすったもんだの後に再会し、旅慣れたトラック運転手である彼女の案内する民泊や、実は彼女の今回の旅の目的であった「妹のお迎え」と称する自給自足集団からの奪還作戦と、先の読めない賑やかな旅となる。車中「知床旅情」の歌で盛り上がる光景が、ロードムービーの気分を高めて情感がある。
    美帆の行きつけの民泊では歯に衣着せぬ婆と、次男夫婦、長男の嫁がいるが、夫を亡くして失声症となった(でも明るい)嫁と、國子の兄・湊人との出会いがある。
    車の旅に同行したかつお(飛行機にしなかったのは犬は貨物扱いにされるからとイヌ愛の深い小波が反対した)は、被災地の海、そして北海道で、先輩の犬ジョージ(成清正紀)と出会う。人間界から一定の距離をとった犬の世界での二人(二匹?)の存在は、リアルの犬らしさと人間のメタファー要素を併せ持ち、絶妙な描写である。北海道で彼の声を耳にしたかつおは國子の持つリードを振り切って駆け出す。そこにじっと立つ傷を負ったジョージの姿が胸に来る。誇り高く生きた彼は、車に引かれたらしい負傷した体で必死で立ちながらも、「ママ」(彼に立派な首輪をつけた)の幻影に近づこうと歩く。夕闇迫る中、不安に駆られ吠えるかつおを國子は見つけ、抱きしめる。そして遠くから、ジョージと思しい「負傷した犬」を見つけたと叫ぶ小波の声が遠くから聞こえる。弱味をみせず胸を張って立つ「美学」は現実の前に容易く剥がれ、孤独の内にあったろう彼の姿を犬を愛する小波の視線が捉えた事に、心からの安堵が広がる。
    正哉(登場しない)と聖美を追った誉と國子の二人は、ようやく目的地に辿り着く。國子の訪ね人が札幌で見舞った病人とは聖美の唯一の肉親である祖母であり、國子らが到着した前日に亡くなっていた。そしてこの日は実家で一日中近所の弔問客を受け入れる日、数名の喪服姿が挨拶をして去っていく。
    二人は探す相手が居る家屋の前に佇み、見えない屋内へ想像の視線を注ぎながら、それぞれの思いを吐露する。会話を交わす中で二人は励まし鼓舞し合うが、ある結論を受け入れ、泣き、笑い合う。
    人と人が偶然、ある形で関係し、何らかの繋がりを持つ事という、余剰(欲望)を削ぎ落した最後に残るシンプルなありようが、冷たい現実だからこそ暖かく見える逆説。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    この舞台で、六十五年も前に大学の一般教養の「社会学」で初めて教えられた「社会は基礎集団(肉親の関係)と機能集団(他人の関係)から成る」と言う社会の構造の原則を思い出した。
    いま現実社会が、それぞれの集団の規律を失い浮遊していることから、さまざまな問題が起きる。肉親の欠如を社会が埋めきれず、逆もまた機能しない。言わば、人間がどこにも主なき「ノライヌ」になっている。
    第三国人が幅を利かせているような都会の街で三人の女が、恋人に裏切られ、捨てられ、肉親を怪しげなカルト集団にもっていかれる。そこからの回復への旅の道のりをロードムービー風に描いている。2時間45分(休憩10分)と長い。
    家族はいま、社会はいま。と問うが、あまり教条的に進まない。「横転」や「ひとよ」、「荒れ野」の現代の社会劇(と言うのも古臭いカテゴライズだが)作者としてのこの作者のいいところだ。今の社会に取り残されたような人々や集まりをジャーナリスティックに取り上げているが、舞台には今の風が流れているし、提示されるテーマは根源的だ。
    一筋縄ではくくれない発展途上の作者で、今までも自作を再演するたびに(あるいは舞台から映画へとメディアを変える時に)書き直してバージョンアップしている。この作品は自分の主宰する劇団で、自分も気持ちよく舞台に出て、と第一稿風で、まだ、まだるっこいところや説明不足のところも多い。
    以下はその感想と言ったところだ。
    この作者、いつも舞台を進めていく主人公がなかなか決まらない。一人一人、丁寧に説明していき、その時のエピソードや芝居も悪くはないのだが、それに気を取られていると、それぞれの人物の関係が分かりづらくなる。観客が芝居から外されてしまう。
    「ひとよ」の映画版が分かりやすかったように映画ならワンカットの映像で済むところが、芝居はそうはいかない。この作者は映画脚本も書くのだから今後の課題だろう。
    もう一つ、「或る、ノライヌ」と言うが、実際に彼女たちの周囲にいるイヌそのものを擬人化して舞台に上げてしまうのはどうだろう。犬の社会の説明もいるわけで、それで随分尺を食って分かりにくくなっている。みんなで、路地で吠えれば、たしかに象徴的だがどんなものか。
    舞台からは最近珍しくなった80年代、90年代の小劇場の匂いがする。最近の新しい劇団はちゃっかり、ドラマターグなどを置いて客観的に整理してしまうところを、ここはぐずぐずと引きずっている。それは脚本だけでなく、俳優の演技や、美術や照明にも表れている。その功罪は決められないが、今回はすべてに少しとっ散らかっているように思う。
    といろいろ言いたくなるところがこの劇団に良いところで、きっと作者も、第一稿のつもりで気が付いているだろう。観客は付き合うしかない。
    さらに余計なことだが、この「倉」(ソウと読むらしい)という劇場、新装なってから始めて行った。もう彼岸過ぎで、このあたり夜はすっかり暗い。とても劇場とは思えないところに入り口がある。元劇場のあったところに表示でもあればわかりやすいのに。


  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2021/09/30 (木) 19:00

    KAKUTA久々の新作は、15年ぶりだかという劇団員のみの公演だが、とてもいい芝居を観せてもらった。
     いくつかの話がそれぞれ立ち上がり段々とまとまって最後は一つの話になるというのは、KAKUTAの、桑原の、得意とするところだが、今回は加えてロードムービー的な要素も加わり、芝居が広がりを見せた。加えて劇場の適度なサイズ感が巧みで、多様に変化する舞台美術も相まって、小劇場演劇らしさが見事に活かされている舞台になっていた。イヌの視線から見る、というのも新たな要素だったが、ちょっと切ない終わり方が泣かせる。劇団員だけということもあってか役者の相互に活かされ方も巧いが、若手もベテランも活躍する中で、主宰・作・演出の桑原の役者魂みたいなものも観られたような気がした。80分(休憩10分)65分強の計2時間40分弱が全く長く感じなかった。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    鑑賞日2021/09/30 (木) 13:00

    145分。10分の休憩を含む。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    2時間半ほどの長編だったけれど、集中が切れることなく、あっという間の2時間半だった。
    桑原さんの脚本がとてもイイ。わかってはいたがあらためて思う。
    今回、桑原さんがかなりメインの役をやられていた。役者としてあれだけ出演しながら、脚本・演出もしてしまうのがホントすごい。

    ネタバレBOX

    特に犬のカツオのセリフや想いに心が動かされた。誰も泣いていない何でもないシーンでも涙が…。誰かを想う気持ちに人も動物もないからだろう。ラストのカツオの姿を見て、ハッとする思いもして、帰り道に考えながら歩けるのもステキ。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    ネタバレ

    ネタバレBOX

    KAKUTA『或る、ノライヌ』を観劇。

    幸か?不幸か?の出来事に遭遇してしまった人たちの生き様を、散らばったパズルがゆっくりと組み合わさって行くように人生を描く桑原裕子の作術は演劇界ではトップレベルであろう。答えなど出る訳などがない人生も物語というパズルに当て込むとすんなり腑に落としてくれるのがKAKUTAの虜になってしまう理由でもある。
    さて、今作は如何に……。

    不倫相手に逃げられた國子、恋人が去ってしまった誉、妹が宗教に取り込まれてしまった美帆。それぞれの目的が偶然一致した彼らは行動を共にし、同じトラックに乗り込んで遠い旅に出る。だが目的は達成したが、結果に大きな隔たりが生じてしまうのであった……。

    前半での登場人物の描き方が冗長しすぎたのだろうか?
    パズルが後半に一気に組み合わさって行くという展開すら予想出来ないくらい長く、物語のまとまりに欠けた感は否めない。
    クライマックスの見せ場は流石であっただけに、前半部分の描き過ぎがKAKUTA特有の余白を無くしてしまったのが残念でならない。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    冒頭、街灯がチカチカッってなった瞬間にグイっと引き込まれた。
    傑作の一言!
    お薦め!!!!!

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