満足度★★★
舞踊や映像等形態を跨いだ表現を追求‥的な文句に惹かれ随分前から公演情報を待っていた。速報時点では確か公演名は「領土」。舞台を見た印象もそうだが、内容を絞り切れず変転した事が窺えた。幽霊とは津波の被災地東北のそれ。演出者が現地で聞いた幽霊に関する証言が映像にも出てくる。ドキュメントな映像には説得力があるが、この素材が生きるような舞台が作られたかった。
出演者に託したもの・・まず幽霊に関する基礎知識。円山応挙の絵が日本の幽霊のイメージを作ったが他国では違うといった導入や、災害当事者の証言、映像にあった死んだ娘の冥界からの言葉、僧侶の出立ちで「朝には紅顔・・夕には白骨・・」とある蓮如の御文、など。映像が代弁する現実に対し、舞台ではその解釈的な事柄が展開する。つまり「説明」となっている。最終的に亡くなった娘は「良い子」が言うような台詞を吐き、幽霊とは自分自身の投影であるとの解釈で結論づけられる。
これら全て、私には冗長で不要に思われた。恐らく映像が持つ性質と舞台の性質の違いを把握した上で組み合わせる技術を持たなかったためではないかと想像した。舞台の補助手段として映像がある、のでなく今回は映像を軸に舞台を構成しようとした、その順序であればそれは難しかった。舞台人の補助を必要とする映像作品はあまり観ない。舞台を引き立てる映像なら、今その使い手は増えている。
宮城県石巻市での取材をもとにした舞台。約1時間20分。「幽霊」を見る、演じるだけでなく、「幽霊」に成る体験。終演後のトークも聴いて、素直に受け止めて良さそうに思った。横浜公演あり。