麦とクシャミ 公演情報 麦とクシャミ」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
1-7件 / 7件中
  • 満足度★★★★★

    初めて拝見する団体ながら、過去の作品に対する観劇仲間の感想などから、きっと好みに合うだろう、と期待していた。そしてその期待以上に好みの作品だったと思う。

    歴史に題材を取つつ、人の暮らしに寄り添うように進んでいく物語は、大地の変動と戦争による時代の激動の中で、人が生きていくということを確かな手応えで描き出す。それぞれの理由でその土地に暮らす一人ひとりのお国言葉が、彼らの背景に厚みを加える。

    火山の噴火により大地が鳴動し隆起していくという稀有な事態に加えて、戦争末期であるという非常事態。そんな中でも人々は山菜を採り、花火を見上げ、サイダーを飲む。時代に翻弄され、それでも生き抜こうとする人々の強さが愛おしい。

    鳴動し続けている火山を、小さな郵便局の局長さんが淡々と観察し続ける。彼の息子は戦地から戻らない。満州帰りの軍人が広島弁で語った戦地の様子と、彼の故郷に落ちた新型爆弾のウワサ。

    女たちや男たちの、キレイごとでない喜怒哀楽が笑いを誘いながら、しだいにそれぞれの切実な想いを浮かび上がらせていく。

    声高にメッセージを語るのではなく、平凡な人々の暮らしぶりを丁寧に描きながら、それを通して感じられる明確な意思が全編を貫く。温かみのある骨太な物語が、ある種の古典めいた軸の強さを感じさせた。

  • 満足度★★★★

    鑑賞日2016/10/15 (土)

    昭和新山誕生が舞台で、何かスペクタルな要素を想像していましたが、それよりも遥かに存在感があったのは、そんな環境下で地道に、逞しく、強かに生きる人間たち。「どっこい、生きてる!」って感じの生々しくも強靭な生命力が印象的。
    全般、なんか「生の素材を活かした料理」みたいな芝居で、脚本で技巧に走るのではなく、本当に役者の良さを前面に活かした印象を受けました。彩る徹底的な「方言」が強さと温かさを演出していて、特に中村真生さんの岩手弁は素晴らしい。
    普段からアレで生活してるんじゃないかなと思うほど。そして、宮部純子さんの徐々に強かさが現れてくる芝居の感じも良かったな。河村竜也の最後のシーンも、一転、現実・現代に帰ってきているかのような説得力と余韻が印象的でした。観に来て良かった。

  • 満足度★★★★

    火山と戦争
    断続的に溶岩が噴き出し流れるような噴火騒ぎが、大東亜戦争末期に起きていたんだと。
    「兵隊さんの士気にかかわるので(噴火の事は)口外せぬよう」、などと、よく聞くようで聞かなかったコトバに、我が鼓膜も新鮮がっていた。
    北海道で起きた実話だと、パンフで知ったが、実話ではなくても芝居は示唆的で趣き深いものだった。

    方言が醸す庶民のおとぼけぶり、純朴ぶり、透けて見える打算もまた愛らしい脱力な風合いは、百姓が持つ「大らかさ」という名の粘り強さ。そこに時折、床下に隠した刀甲冑の鈍い硬質の光も見せる。そんな芝居。
    アゴラ劇場という劇場は、さほど使い勝手のよい劇場ではないと思う。ホエイはアゴラの空間をがっちり味方につけ、劇世界と一体化していた。

    史実の「重さ」を強調せず、脱力味を基調に、ある時代のある場所の一こまを(芝居としての)風景画に収め得た作品。 『珈琲法要』に通じる味わい。 演出上も脱力味を際立たせた、工夫というか何というか、予算上の都合で・・とでも説明されそうな場面あり。 
    山田百次戯曲の今後も楽しみになる。

  • 満足度★★★★

    ユニークな仕掛けもあった、115分
    郵便局員同士の会話から始まり、やがて、ゆれる表現とか、溶岩をモチーフ(?)としたものが投げたり、ふわふわな火山をモチーフとした小道具が登場したりして、今までなかった、山田百次さんの脚本とアイデアの進化が見えて、最後にはサイダーを飲む姿は、いまいち、でも、ユニークな仕掛けもあった、115分でした。

  • 満足度★★★

    サイダー
    面白い。115分。

    ネタバレBOX

    原田(中村真生)…手紙の検閲に反抗するなど実直な奥さん。火山の影響で農業できなくなり、郵便局で働き始める。
    不動寺(宮部純子)…住職の奥さん。元花魁。終戦後、国債が無価値になり、財産の1/4を没収され、キレる。
    鳥谷(緑川史絵)…太めな奥さん。お国のため精神をのたまいつつ、食欲に従順。
    岩村(朝比奈竜生)…山菜取りにせいを出す男だが、周囲からは、人のナワバリに手を出しているとニラまれている。
    小松(山田百次)…郵便局局長。火山や地震などを調べるのが趣味。
    柏(伊藤毅)…郵便局員。朝鮮人ともつながりのある、出自不明な男。小松に拾ってもらった。戦後、行方をくらます。
    山本(河村竜也)…内地に戻された陸軍人。右耳が難聴。

    日本が戦争で消耗する中、北海道のある地区では地震(や鳴動)が頻発し、生活への影響が出ていたが、陸軍はそれを機密事項とした。それでも、人びとはいき続け、終戦を迎える…。
    昭和新山のことはあんまり知らなかったというのもあり、結構スゴイことが終戦間際で起きていたんだなと。タフな登場人物を通して、力強さは感じられた。終盤で、軍人の存在をおぼろげにしたとこも良かった。柏の出自のように、現代ほどしっかりしたステータスがない時代という、混沌さみたいな空気も出てたし。
    中村の方言がとりわけ上手い。なんか一生懸命なおばちゃんな感じも良い。山本の過去回想での火山灰だか火山弾だかの演出も○。暗転後も続くセリフに、怒りがこもってた。

    ただ、ちょっと長いかなと。
  • 満足度★★★★

    むくむく
    色んな事が一つに繋がりました。

    ネタバレBOX

    昭和新山ができたときの話。

    郵便局長が冷静に記録していた話は小学生時代に教科書で読んだことがあり、むくむくと昭和新山ができたことは知っていましたが、戦時中ということで情報統制がなされていたこと、鉄鉱石等を運ぶべく鉄道輸送の重要性が背景にあったことまでは小学生には思い至りませんでした。

    当時の郵便局は戦時国債を積極的に販売していたのですね。祖父から当時積み立てていて将来楽しみにしていた年金がパーになったと聞かされたことを思い出しました。

    北海道に流れてきた人々の背景も興味深かったです。
  • 満足度★★★★

    約110分
    第二次世界大戦は各地で日本人を苦しめた。あの大戦を日常劇の手法を用い、一地域に的を絞ってミクロな視点から描くことでそのことを生々しく伝えてくれる良作。
    お勉強する感じでなく、たまに笑ったりしながらしゃっちょこばらずに観られるのがいい。

    ネタバレBOX

    国家というのが何かにつけ隠し事をするのは昔っから。それに新聞のみならず、テレビまでが加担している今の日本はかなりヤバいと本作を観て思った次第。参院選では争点を隠し、都知事選では「主要3候補」以外の18人を隠し、今は沖縄でのあれやこれやを隠匿。ひどい。

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