再演と言うものはなかなかしたくないな、と思うには思ってやってきました。「新作が書けなくなったと思われるんじゃなかろうか?」と言う心配ももちろんあるにはあったけど、そもそもが自分の作品たちを自分の人生をドキュメンタリーのように捉えている部分もあって、「そのとき、その場所だからこその物語」であることを、けっこう大きく重視してきました。
この『ゴベリンドン』は『ゴベリンドンの沼』と言う作品の再演だけれど、当時僕らの動員776人しかいなくて、倍々作戦のコンセプトからすればいよいよ「1000の壁」と言う、多くの小劇場団体がその壁を上り切る事が出来ぬまま朽ち果てて行ったんだぞと演劇一年生のときから聞いていた恐ろしい恐ろしい局面に、ついに立ち向かうところでした。
そのときの感じ、が、このときの公演の成功に関与していなかったとは、僕らとしても到底思えず、それだけに、まるで万華鏡のあまりに美しい一瞬に居合わせてしまったような感覚を、僕ら含め誰もが抱いていたように思うのです。
だから、再演をすることによって、その過去のひと刹那を「穢す」ことになりはしないかと、多くの人が思っていた、と言うか、いまも思っているようにさえ思う。自分でも、どこか、怖いと思っている。だからこうやって、再演をする事に付いて、言い訳がましく延々書いているのかも知れません、いま、この小さなコメント欄を延々スクロールさせながら。
でも、どうしてもこの作品をやりたいのです。興行云々のことは差し置いて、どうしても、この作品をもっとたくさんの人間の物語にしてもらいたい。本来「物語」とは400年続いてなんぼだ、と思うところもある自分です。だから、どんどん広がって欲しい。
それと、やっぱりどうしても、この物語に描かれている事を、伝えたい。書いた直後にさえ思った事だけれど、どうしてこんなものが書けたのかと、自分でも不思議に思ってる。書かされたのだなあ、なんて、天を仰ぐ。
今回のこの公演が、どうかみんなの公演でありますように。そのために僕たちは、ありとあらゆる努力をしてみせる。
とうぞ宜しくお願い致します。